1.アフリカから日本列島へ、祖先の長い旅 アフリカを起源にもつ私たちヒト(ホモ・サピエンス)は、およそ5~10万年前に故郷を出て世界中に拡散していった。出アフリカの時期とルートは現在も議論のあるところだが、一部の集団がおよそ4~5万年前に東アジアに進出したことは、化石の証拠などから明らかとなっている(図1)。このようなヒトの歴史を探る研究には、これまで人骨や土器などを発掘し観察する考古学と古人類学の手法が用いられてきたが、1980年代以降DNAから歴史を読み解く遺伝学的研究も盛んに行なわれるようになった。私たちヒトが100万年以上前にアフリカを出て世界に拡散した原人の子孫ではなく、およそ20万年前にアフリカで誕生した系統の子孫だという「アフリカ単一起源説」の証明も遺伝学的研究による成果の1つである。