「英語にはゼノフォービア(xenophobia)という言葉があって、外国人恐怖(嫌悪・排斥)症などと訳されますが、私はこの感情が日本人には見事に欠けていると思います」という文章があって、こんな本は無視すればいいやと思っていたのだが、アマゾンの読者評では高得点なので、ちょっと口をはさまないわけにはいかなくなった。トンデモ本だということに気がつかない人が多すぎる。 『日本人はなぜ日本を愛せないないのか』(鈴木孝夫、新潮選書)。初版は2006年だが、私が買ったのは2008年の6刷だから売れているらしい。買っているのは、多分、「週刊新潮」や「諸君」や「SAPIO」などの愛読者だろう。乏しい根拠でも、「日本はすばらしい」と書いてあるとうれしくなり、なにも考えず子守唄のごとく受け入れて、「左翼はアホだ。朝日はウソばかり」と書いてあるとなお喜んで買う層だ。著者は言語社会学を専攻する慶応大学名誉教授。言語