ブックマーク / honz.jp (96)

  • 『こころ傷んでたえがたき日に』村上春樹もそこにいた - HONZ

    ありふれた日常も描き方によっては人を惹きつけることを、書に収められた22編は認識させてくれる。 主役の大半は市井の人々だ。風呂無しアパートにひとり住み、決まった時間に決まったことを日々こなす老人、公園のベンチに座っているタンクトップ姿の中年、新聞配達の男性。そこには大文字で語られるような出来事はなく映るが、一皮むけば我々が想像しないような苦悩も、喜びも転がっている。どのような人にも物語はある。 寂しそうな老人は新聞への川柳の投書を欠かさず、川柳仲間との交流もあり、その世界では名が知られている。ベンチに座るサラリーマンは幸せな新婚生活を送っていたが、ある日、帰宅すると家がもぬけのからだった。新聞配達の男の配達歴は60年にもおよび、業を持っているにもかかわらず、毎日深夜1半時に販売所に出勤し続ける。 ワケありの人もいる。胴の前面と背中の両面に宣伝用の看板を着けて路上で宣伝する「サンドイッチ

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    te_k000 2018/09/26
  • 『江戸の目明し』時代劇のファンタジーを吹き飛ばす - HONZ

    銭形平次、人形佐七、三河町の半七…テレビドラマや小説で人気の親分たち。近年では中村梅雀さん演じる黒門町の伝七がよかったなあ。かつて同じ伝七を演じて大ヒットを飛ばした父上・中村梅之助さんから、亡くなる直前に秘蔵の十手コレクションを託されていたとか。劇中で使われていたのがその十手なのかどうかは定かではないが、紫房の十手を大切に神棚に祀る姿は、亡き父上への敬意を胸にこの役を受け継いだのであろうと思われて、なおさら感動し楽しく拝見した。いいねえ、時代劇。江戸の人情。人の世は情。そして正直、まっつぐこそ庶民の心意気…。「よよよい、よよよい、よよよいよい!めでてぇな!」 ところが!岡っ引き、すなわち目明しの実態は、ドラマや小説とはかけ離れているのだという。そもそも十手は用がある時だけ貸し出され、捕り物が済んだら取り上げられるので神棚に祀るなんて無理無理。いやそも、建前では目明しは「存在しない」。いない

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    te_k000 2018/09/24
  • 『失われゆく日本 黒船時代の技法で撮る』縄文時代から受け継がれてきた知恵にこそ、現代の問題を解決するヒントがある - HONZ

    『失われゆく日 黒船時代の技法で撮る』縄文時代から受け継がれてきた知恵にこそ、現代の問題を解決するヒントがある エバレット・ケネディ・ブラウン氏は、現代では極めて稀な湿板光画を使ったフォトジャーナリストである。湿板光画とはガラスに感光溶剤を塗布した板で写真を撮影する技法で、1850年代から普及し、乾板写真が発明される1870年代までの短い期間使われていた。日にも、江戸幕末期の安政年間(1854-1860年)の初めに輸入され、墨絵のような表現力で味のある世界を数多く映し出してきた。 エバレット氏は現在、京都近郊で滋賀県の月心寺に居を構えながら、1860年代に作られた古いカメラとレンズを使って、自身が「タイムマシン」と呼ぶこの湿板光画の技法で時を超えた日の記録に取り組んでいる。 生まれはアメリカのワシントンD.C.で、若い頃に世界中を旅して回り、29歳の時に日移住し、一時はEPA通信

    『失われゆく日本 黒船時代の技法で撮る』縄文時代から受け継がれてきた知恵にこそ、現代の問題を解決するヒントがある - HONZ
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    te_k000 2018/09/24
  • 【連載】『全国マン・チン分布考』第2回:「女陰」方言のきれいな円 - HONZ

    放送禁止用語に阻まれた『探偵! ナイトスクープ』の幻の企画が、ついに書籍で実現。かつて『全国アホ・バカ分布考』で世間を騒がせた著者が、今度は女陰・男根の境界線に挑む! 第2回は「「女陰」方言のきれいな円」について。「女陰」の表現は、京を中心にきれいな多重の円を描いていることが明かされる!(HONZ編集部) 第1回はこちら 「女陰」方言のきれいな円 この「女陰」「男根」言葉は、「消滅の危機に瀕する」方言のひとつとして、文部科学省のバックアップのもと、東北大学教授の小林隆氏をリーダーにして(私と同じ、全国市町村の教育委員会への郵送によって)、2000〜02年に調査された数多くの語彙の中に含まれ、そのデータは早くも2003年に報告書として公開されました。 この成果はさまざまな研究者に活用されています。「女陰」については『方言研究の前衛』(2008)に、中井精一氏の研究報告があります。ただしここで

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    te_k000 2018/09/20
  • 『生存する意識──植物状態の患者と対話する』 グレイ・ゾーンに閉じ込められた意識と、それを発見し、それと意思疎通する科学 - HONZ

    『生存する意識──植物状態の患者と対話する』 グレイ・ゾーンに閉じ込められた意識と、それを発見し、それと意思疎通する科学 植物状態と診断されながらも、じつは意識がある人たち。そうと示すことがまったくできなくても、たしかな認識能力を持ち、どうしようもない孤立感や痛みを感じている人たち。そうした人たちが置かれている状況を想像し、悪夢とも思えるその可能性に身震いしてしまった経験が、おそらくあなたにもあるのではないだろうか。だが現在の科学は、その可能性を前にしてただ震えているばかりではない。誰かが現にそうした状況にあるかどうかは、なんと科学的に検証できるようになりつつあるのだ。 書の著者エイドリアン・オーウェンは、その科学を「グレイ・ゾーンの科学」と呼ぶ。グレイ・ゾーンとは、おもに植物状態と診断されている患者の、「物事を満足に認識できないが、認識能力を完全には失っていない」状態である。そしてオー

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    te_k000 2018/09/20
  • 『男たちよ、ウエストが気になり始めたら、進化論に訊け! 』 - HONZ

    筋肉から脂肪へ 若い頃は駅の階段をスタスタ上がり、重い荷物も平気で持てていたのに、いつの間にやらエスカレーターを利用し、「よいしょっ!」と気合いを入れて荷物を持ち上げている自分がいる。そしてお気に入りだったジーンズのウエストが、もう合わなくなっている…… 筋肉から脂肪へーーこうして、男たちは我が身にも老化の波が押し寄せてきていることを実感するだろう。筋肉が落ち、胴回りが増す傾向は、病気ではない。過度な肥満は別として、男の老化として、ごく自然な成り行きである。 書はこうした変化を、男が年を取ることによる適応戦略として捉える。そこには驚くべき進化上のメリットが隠されているというのだ。 男は女と比べて、基礎代謝率が高く、エネルギーを多く消費する。それは男のほうが身体で消費カロリーの高い筋肉量(特に骨格筋)が多いためである。 骨格筋は、エネルギー投資の面では、不経済で高くつく。にもかかわらず、男

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    te_k000 2018/09/17
  • 『破天荒フェニックス』事実は小説よりも奇なりを地でいくような疾走感 - HONZ

    私は2011年にレーシック手術をして以来、視力矯正の為のコンタクトレンズやメガネを着けていない。変装のために度なしの伊達眼鏡をする程度。それも友人がやっているブランドのものを提供してもらったりするのでいわゆる眼鏡店には全く興味がなかった。 その為眼鏡店の事情にはめっぽう弱い、というか全く興味がない。だからOWNDAYSの事ももちろん全く知らなかった。人混みに行くと指を刺されるのでショッピングモールにも繁華街の昼間もほとんどうろつかない。そりゃ気づくわけもない。そんな眼鏡販売店の再生の物語。普通なら興味を持つわけもない。 きっかけはコルクの編集者・佐渡島庸平のフェイスブックの書き込みだった。彼がnoteに連載されていたOWNDAYS田中社長の原作をめちゃくちゃ評価していたのだ。こんなことは滅多にないしnoteは一話ずつ読めるので、つまらなかったら途中で読むのやめればいいかという軽い気持ちで読

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    te_k000 2018/09/13
  • 【連載】『全国マン・チン分布考』第1回:京都の若い女性からの切実な願い - HONZ

    京都の若い女性からの切実な願い 1995年5月初旬のことです。ユニークな内容が書かれた一通の手書きの依頼文が、『探偵!ナイトスクープ』に寄せられました。そのころはまだパソコンが普及していませんでしたから、依頼は必ず、はがきか手紙で寄せられました。 手紙をくれたのは、京都市内に住む24歳の女子学生でした。地元京都で学生になる前に、東京で働いていた時期があったようです。この依頼はまさにこののテーマ、なんと「女陰」の名称の全国方言分布図を作成してほしいと求める内容だったのです。こんなお願いが、若い女性から、しかも大真面目な文章で寄せられてくるとは、夢にも思っていませんでした。 私たちに依頼文が届いたのは、1991年5月24日に「全国アホ・バカ分布図の完成」編を放送してから、ちょうど4年が経ったころでした。この放送をきっかけに、私が「アホ・バカ方言」の研究を仕事の合間に始め、『全国アホ・バカ分布

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    te_k000 2018/09/13
  • 『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』ロシア史上最悪の遭難怪死事件に挑む - HONZ

    一般に、は読めば読むほど物知りになれると思われがちだが、実際は逆だ。読めば読むほど、世の中はこんなにも知らないことであふれているのかと思い知らされる。その繰り返しが読書だ。 「ディアトロフ峠事件」をぼくはまったく知らなかった。これは冷戦下のソヴィエトで起きた未解決事件である。 1959年1月23日、ウラル工科大学の学生とOBら9名のグループが、ウラル山脈北部の山に登るため、エカテリンブルク(ソ連時代はスヴェルドロフスク)を出発した。 男性7名、女性2名からなるグループは、全員が長距離スキーや登山の経験者で、トレッキング第二級の資格を持っていた。彼らは当時のソ連でトレッカーの最高資格となる第三級を獲得するために、困難なルートを選んでいた。資格認定の条件は過酷なものだったが、第三級を得られれば「スポーツ・マスター」として人を指導することができる。彼らはこの資格がどうしても欲しかったのだ。 事

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    te_k000 2018/09/07
  • 『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』現代の「知の巨人」が問いかける人類の未来 - HONZ

    前作である『サピエンス全史』で著者ユヴァル・ノア・ハラリは、認知革命により、自らが生み出した虚構と共同主観を信じる能力を手にした、私たちホモ・サピエンスが、いかにして農業革命、科学革命を成し遂げ、現代に至ったかを、様々な哲学、宗教、そして最新の科学研究を駆使して論じ、さらに幸福という基準を軸にサピエンスの歴史を包括的に描き出した。 ハラリは『サピエンス全史』の最後で、サピエンスは科学の力により自らをアップグレードし、新たな人類へと移行する道を選ぶのではないかという大胆で、少し不気味な予想を立てている。もし、それが実現可能であるのならば、新しい人類が作り出す社会はどのようなものになるのか?そんな疑問に答える形で生み出されたのが、書『ホモ・デウス』である。 書では、サピエンスは飢饉、疫病、戦争という人類を常に掣肘してきた脅威を、概ね克服したという認識を私たちに示す。これら3つの事柄はこれか

    『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』現代の「知の巨人」が問いかける人類の未来 - HONZ
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    te_k000 2018/09/06
  • 『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』 - HONZ

    書『ホモ・デウス——テクノロジーとサピエンスの未来』は、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリが『サピエンス全史――文明の構造と人類の幸福』に続いて、該博な知識とじつに多様な分野の知見を独創的に結集して著したHomo Deus: A Brief History of Tomorrowの全訳だ。ただし、前作同様、最初のヘブライ語版が刊行されてから著者が行なった改訂や、日語版用の加筆・変更を反映してある。 全世界で800万部を超えるベストセラーとなっている前作では、主にサピエンス(著者は他の人類種と区別するために、現生人類であるホモ・サピエンスをしばしば「サピエンス」と呼ぶ)の来し方を顧みたのに対して、作ではその行く末を見据える。『サピエンス全史』では、認知革命、農業革命、科学革命という三つの革命を重大な転機と位置づけ、虚構や幸福をはじめとする斬新な観点を持ち込みながら過去を振り返り

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    te_k000 2018/09/05
  • 「時間」そのものに興味がある人すべてにオススメしたい──『タイムトラベル 「時間」の歴史を物語る』 - HONZ

    「タイムトラベル」といえばこれを読んでいる多くの人は「あーはいはい」とその意味するところをすぐに理解してくれるだろう。空間のように時間を移動することができて、未来に行ったり過去に行ったりできるアレのことだ。もちろんタイムトラベル事象は我々の生活の身近なところにあるものではないけれども、邦画でも洋画でも、漫画でも小説でも「タイムトラベル」が出てくるものはいくらでもあるから、なかなかこの概念を知らぬままに生きるのも難しい。 しかし、この「タイムトラベル」という概念はいつ頃生まれたのだろうか。あまりにもよく知っている、よく(フィクションの中で)用いられているものだから、神話の時代からあるだろうと思ってしまうが、実はその起源はごく浅いと著者はいう。 (……)古代人には、永遠の命、生まれ変わり、死者の国といった概念はあったが、時間旅行という概念はなかった。現代人には馴染み深い「タイムマシン」など、ま

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    te_k000 2018/09/05
  • 『偽りの薬 降圧剤ディオバン臨床試験疑惑を追う』 - HONZ

    製薬企業と大学医学部などの医療機関がカネで癒着して、特定の薬の効果を証明する臨床試験のデータを改ざんあるいは捏造して、実際にはない効果を「ある」とする報告(論文)を公表し、企業は論文を利用して大々的に宣伝、医師はどんどん患者に投薬したら何が起こるのか。 それは、あまりにも明白だ。その薬を処方された患者は、効くと信じて医療費を支払い、薬を飲み続けているのに、症状が改善されなかったり、危惧していた副作用が生じたりするという被害を受けることになりかねない。 一方、製薬企業はその薬の売れ行きを大きく伸ばして巨額の収益を得、臨床試験の主任を務めた教授クラスの医師は製薬企業から多額の奨学寄付金を大学に提供させて、学内での権威と地位を高めることになる。そんな「患者無視」の偽りの臨床試験と偽りの薬の販売は、医の倫理・企業の倫理に反することであり、絶対にあってはならないことだ。 ところが、まさにその通りの事

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    te_k000 2018/09/03
  • 『土・牛・微生物 文明の衰退を食い止める土の話』 - HONZ

    書はデイビッド・モントゴメリー著“Growing a Revolution”の全訳であり、『土の文明史』『土と内臓』(ともに築地書館)に続く三部作の完結編である。三作はいずれも、人間社会とそれを包括する文明と環境を、「土」という共通の切り口で解読したものだ。 一作目『土の文明史』では、世界の文明の盛衰と土壌の関係を。世界中のさまざまな時代と地域を検証した著者は、土壌が文明の寿命を決定し、土を使い果たしたとき文明は滅亡するという結論に達した。現代文明においても、農業生産性を上げるために化学肥料や農薬、機械力を集中的に投入するほど、土壌は疲弊し、やがては生産に適さなくなる。しかし化学製品の投入量を抑え、土壌肥沃度を高めながら、今後の人口増加に対処して糧を増産するような方向へと転換することは可能なのだろうか。われわれの文明が滅亡を回避するための道として、土の扱いを変えることを提唱しながらも、

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    te_k000 2018/08/31
  • 『大英帝国の歴史』イギリスの人気歴史家、ニーアル・ファーガソンの出世作がついに翻訳! - HONZ

    『憎悪の世紀』『マネーの進化史』『文明』などで有名なイギリスの歴史家、ニーアル・ファーガソンの新刊である。最も書は国イギリスで2003年に出版されていた作品だ。連動して制作されたテレビ・ドキュメンタリー『EMPIRE: How Britain Made the Modern World』ではニーアル・ファーガソン自身が番組の案内役として出演し英語圏各国で多くの視聴者を得た。まさに、ニーアル・ファーガソンの出世作といっていい作品なのである。 そのテーマも壮大で、400年に及んだイギリス帝国の発端から終焉までを政治、軍事、経済、宗教と縦横無尽に駆け巡り論じ、ミクロとマクロの視点を交互にしながら、なぜイギリスが大帝国を築くことができたのか、そして、イギリスが作り上げた帝国は歴史上どんな意義があったのかと、問いかけていく。 特に2点目の帝国の意義という問いかけは大変に難しいものであろう。現代社

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    te_k000 2018/08/28
  • バーチャルリアリティーの果てしなき未来『VRは脳をどう変えるか? 仮想現実の心理学』 - HONZ

    PTSD、人間関係、身体問題、環境問題、弱者への共感、慢性疼痛、スポーツトレーニング、教育、などなど。バーチャルリアリティー(VR)はこれほどまで多くのことに応用できるのか。『オンデマンド経験-バーチャルリアリティーとは何か、それはどう機能して何ができるのか』という原題が示すように、VRはいとも簡単に必要な「経験」をもたらし、さまざまな応用が可能なのだ。 一度経験すれば、VRに対する見方がまったく変わると言われたことはあるが、いまだにその経験はない。たかがゲームを面白くする、あるいは、映像メディアの延長だろうと思っていたのは浅はかだった。VRのことをまったく知らなさすぎたといえばそれまでだが、このの内容には心底おどろいた。 著者、スタンフォード大学心理学教授のジェレミー・ベイレンソンによると、VR経験は『メディア経験』ではなく『経験』そのもの」である。驚くべきことに、あくまで仮想空間での

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    te_k000 2018/08/27
  • 『成績をハックする:評価を学びにいかす10の方法』学びの再起動ボタン - HONZ

    書はニューヨークで英語やジャーナリズムを教える高校教師が、成績を用いず、生徒を評価する挑戦を行った記録である。通知表を捨て、成績をつけないクラスの実験を5年ほど前にはじめた。 淡々とコンパクトに実践の記録をまとめているが、時折顔をのぞかせる著者の成績に対する意見は核心を射抜いている。 成績は、生徒を動機づけたり、罰したりするのに使われます。生徒がしたくないことをさせるために存在する極めて強力なツールなのです 成績は成長を大切にせず、生徒を互いに対抗させるという競争に基づく学習文化を生み出す 保護者はよい成績をとることが成功することであると思いこんでいる。そして、それを子どもたちにも教える 成績は生徒にとってではなく、結局のところ教師にとっての強力な武器でしかありません とはいえ、教師が成績をつけるというのは聖域であり、変更が難しいアーキテクチャーである。そして、教師だけでなく、生徒自身も

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    te_k000 2018/08/27
  • 『意識の川をゆく 脳神経科医が探る「心」の起源』 - HONZ

    書は1933年生まれ、2015年に亡くなった、神経内科医オリヴァー・サックスの最後の である。サックスはイギリス人であるが、ニューヨークで医師として多くの業績を挙げ、コロンビア 大学の教授も務めた。サックスの愛読者なら、すでに彼の著作をいくつか知っているであろう。その大部分は彼自身が診 み た患者に関するエピソード的な記録である。医学的、科学的であると同時に、文学的な叙述だと言っていいかもしれない。 その意味では、書にはやや違った趣がある。全体は十章に分かれるが、いずれもある特定の医学的、生物学的な主題を論じている。第一章では、なんと植物学者としてのチャールズ・ダーウィンが描かれる。これはサックスがべつに奇を衒ったわけではない。ダーウィンは若年の時にビーグル号で航海しただけで、あとは自宅にいわば引きこもり、一切の公職に就かなかった。つまり一見地味な生涯を送った。しかしそれとは対照的に

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    te_k000 2018/08/23
  • 『交雑する人類』 古代DNAが世界史を書き換える! - HONZ

    ゲノム革命は我々の想像を超える速度で進行している。ワトソンとクリックが生命のセントラルドグマを解き明かしてからわずか半世紀と少しの間に、PCRやCRISPR−Cas9などの革新的な技術が次々と開発され、SFの世界にしか存在しないと思われたような成果を次々と現実のものとしている。遺伝子共有サイトのデータが迷宮入りしていた凶悪犯罪の犯人を追い詰めたという事例にも見られるように、その影響は多岐にわたり、私たちの生活のあらゆる面を大きく変える力を持つ。 中でも2009年以降に急速に発展した古代DNAの全ゲノム研究の発展は特筆に値する。この分野はマックス・プランク進化人類学研究所のスヴァンテ・ペーボによって確立され、ネアンデルタール人と現生人類の直接の祖先が交配していたことを明らかにした。だが、古代DNA解析が明らかにするのは、単に各種旧人類とホモ・サピエンスとの交雑の有無だけではない。古代DNA革

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    te_k000 2018/08/22
  • 『ホモ・デウス 』人類の営みをデータ処理システムと捉えてみれば - HONZ

    続編は前作を超えない、そんな通説を吹き飛ばすような会心の一冊だ。人類の来し方を描き、全世界で800万部を超えるベストセラーとなった『サピエンス全史』。これを受けた書『ホモ・デウス』では、人類の行く末を戦慄の姿として描き出す。 過去何千年にもわたり人類を悩ましてきた問題、それは飢饉、疫病、そして戦争の3つであった。しかし驚くべきことに、我々は飢饉と疫病と戦争を首尾よく抑え込みことに成功し、この数十年で理解も制御もできる対処可能な課題へと変えることに成功したのである。 ならばそれらに替わり、新たに人類が取り組むべき課題とは何になるのだろうか? 著者のユヴァル・ノア・ハラリは、人類が不死と至福と神性を目指すようになるであろうと予測する。それは人間が自らを神へとアップグレードし、ホモ・サピエンスからホモ・デウスへ変わることを意味する。 重要なのは、予測の根拠だ。書の前半部では前作同様に、我々を

    『ホモ・デウス 』人類の営みをデータ処理システムと捉えてみれば - HONZ
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    te_k000 2018/08/20