【初めに】 現在講談社「月刊アフタヌーン」誌に連載されている『百舌谷さん逆上する』(篠房六郎著)の主人公は、名を「百舌谷 小音(もずや こと)」という。字は違えど、日本で一番有名な「もずやこと」といえば谷崎潤一郎著の『春琴抄』に出てくる主人公「春琴」こと「鵙屋 琴(もずや こと)」だろうと思っていたのだけれど、Googleで「もずやこと」で検索したら、上位10件のうち8件までが「百舌谷 小音」についてのものだった。まあ「琴」は作中でも圧倒的に「春琴」と呼ばれることの方が多いから一概に比べられないが、そんなものかなあ、と思う。 それはさておき、読みが同じ名前を主人公につけるくらいなのだから『百舌谷さん逆上する』(以下「本作品」と略。)と『春琴抄』とは内容面でも何らかの関係があるのではないか、具体的には本作品のなかで『春琴抄』が何らかのかたちで書き換えられているのではないかと考えられる。以下そ