新井英樹「ザ・ワールド・イズ・マイン」と複雑系 (2001年5月、初稿) (2001年7月、改稿) 新井英樹というと既作「宮本から君へ」も各メディア上で大変な物議を醸し、「愛しのアイリーン」でも悪夢を見せてくれた。それゆえ、新井英樹の評価とはシニカルで「嫌なハナシ」の名手という位置付けで語られる場合が多かった。 この作品はしかし、前述2作と比較して圧倒的に視野・スケールを高い位置に設定し、且つ問題意識も全地球規模に 拡大され、否が応にも世界を語られてしまうとんでもないものだ。 新井英樹は東北の田舎町を舞台に、実に土着の閉塞感と諦念、圧迫された欲望と爆発、そして「どうやっても勝てない もの」に対する激しい劣情を描くことをオハコとしている作者である。彼の短編群や、既作「愛しのアイリーン」などに垣間見える「女性崇拝」 、「宮本から君へ」に描かれる暴力ラガーマンに象徴される絶対的な敵、そういった幾