社説天声人語Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら) 古今東西の悪習に、隣り合う国の不仲がある。攻めて攻められ、取ったり取られたり。要らぬ戦を四海が防いだ分、日本は仲直りの経験も乏しい。双方の責任ながら、一度こじれるといけない▼訪日した李明博(イ・ミョンバク)韓国大統領が、野田首相との会談で、旧日本軍の慰安婦問題に初めて言及した。この件を優先して解決する「誠実な勇気」を促したという。首相は国交回復時に解決ずみとの立場を繰り返し、慰安婦像の早期撤去を求めた▼ソウルの日本大使館前にできた像は、慰安婦の少女期をモチーフとする。民族衣装で椅子に座り、道を隔てた日の丸を見つめている。日本に謝罪と賠償を求める団体が、この場での集会が千回になったのを記念して建立した▼日本にすれば、在外公館の尊厳を損ねる非礼にあたるが、大統領は憲法裁判所と世論に背を押され、