医療の進歩によりがん患者の生存率は確実に上がった。しかしながら「がんと生きていく」場合に最も深刻なのが就労問題だ。治療しながら働けるのに解雇される、子会社に出向になり収入が激減する、そんな事例が多発している──。 「幸い、夫のがんは治ったけれど、まさかそのことでマイホームを失うことになるなんて…」 A子さん(35才・パート)の3才年上の夫が会社の健康診断で「初期の胃がん」と診断されたのは、昨年3月のこと。1人息子が小学校に上がるのを機に、一念発起して一戸建てのマイホームを購入した矢先の出来事だった。 「夫は胃を3分の2摘出する手術を受け、2週間ほど入院。それから2か月ほど休養して、仕事に復帰しました。治療費や入院費はがん保険で大部分を賄えましたが、復帰後の収入が激減してしまったんです」(A子さん) 夫はIT企業のエンジニアで、大きなプロジェクトのリーダーを任され、がんで休職する前の年収は8