醤油は生きている〜ヨネビシ醤油 専務 黒羽 一望氏(1) (荒川 龍=ルポライター) 「対話力」で取り上げる3人目は、茨城県の老舗醤油醸造会社「ヨネビシ醤油」の黒羽一望(くろは・かずぼう)専務(76歳)だ。江戸時代に創業し、200年を超える歴史を持つ同社は、昔ながらの天然醸造の醤油(しょうゆ)づくりを続けている。 効率最優先のモノづくりが、偽装事件の続発という綻(ほころ)びを見せる中、時間と手間のかかる二度仕込み醸造で、本物の味にこだわる。「一定の無駄こそが本物の旨味(うまみ)をつくる」と語る彼の、半世紀を超える醤油との対話をたどる。 妙に若々しい醤油醸造家 香ばしい匂いが、レンガ作りの小麦炒(い)り機からプーンと立ち昇る。レンガ内部では、鉄製の円筒が回転しながら小麦と砂を炒っている。天然醸造の醤油づくりは、この作業から始まる。 10月1日、茨城県常陸太田市。旧市街の古い町並み