メスメルと動物磁気 パラケルススは、「流体」が大地や天体から発され、人体へと流れ込んでおり、人体は磁石のように良性および悪性の発散物を引きつけている。このバランスが崩れた時、人は病気になる。だから、こうした原因で起こる病気に対しては、身体の悪い部分に磁石を当てれば、悪い「流体」が吸い出され、大地や天体へと還ってゆく……と考えた。 メスメルは、こうしたパラケルススの説とニュートンの万有引力説の綜合を求めて患者に接しているうちに、自分の中にある種の磁力が働いていると信じるに至る。これが「動物磁気」説である。 1774年、メスメルは痙攣の発作に苦しむ女性を治療していた。彼女の足に磁石を当てると、彼女の症状は沈静化した。 これは、宇宙的規模のものから発せられたものではなく、メスメル個人の人体の内の磁力作用によるもの、と彼は考えた。 すなわち、磁石は伝導体であり、それを用いたメスメル自身が治癒作用を