一度だけ、彼女に誘われて、当時彼女が通っていたダンス教室に見学に行ったことがある。古いビルで、檻のようなエレベーターで上った先に、とてもクラシカルなスタジオがあった。高い天窓から日が差し込み、美しい木目の床を浮かび上がらせている。彼女と同じように大きな夢を抱いた生徒たちが、その床に汗を落として練習に励む。いくら眺めていても飽きなかった。ただの練習なのに、思わず立ち上がって拍手したいくらいだった。 あれはそろそろ帰国日が近づいていた頃だと思うが、散歩の途中、ふと彼女が足を止めた。五番街のティファニーの前だった。聞けば、一度入ってみたいけど、敷居が高過ぎて入れないという。「こっちが客なんだよ」と強がって覗き込んでみたが、宝石店の店内というより、店内自体が名画ででもあるような雰囲気に、すぐに心が折れてしまう。 「じゃ、ここで練習しよう」と僕は言った。 呆れる彼女の前で店員の真似をし、「どのような