第一次世界大戦真っ只中の1917年2月、大日本帝国は英国の要請により、連合国軍の輸送船を保護するため、第二特務艦隊を地中海に派遣する。当時の地中海はドイツ軍のUボートが猛威をふるう「魔の海」―。ここで果敢に戦い、そして命を落とした78名の勇兵たちがいた。日本の海軍史上最初で最後の遥か地中海への遠征について、前編、後編にてお届けする。 第一次世界大戦中、日本が「第二特務艦隊」という駆逐艦隊を地中海に派遣したという事実は戦史に詳しい人ならご存知かもしれない。また、近年発行された『日本海軍地中海遠征記』(片岡覚太郎著)や『特務艦隊』(C・W・ニコル著)などの著作により、今では広く知られる機会も与えられている。 日本海軍が欧州に艦隊を派遣し、本格的な戦闘を行ったのは後にも先にも、この第一次大戦時の「地中海派遣」のみ。それまでの日清、日露戦争で勝利を収めた日本にとって、列強に加わり遥か地中海に出征す