色鉛筆と定規を使い、列車を示す線を1本ずつダイヤ(列車運行図表)に手書きする作成技術がJR西日本で受け継がれている。 定期ダイヤの作成作業は約20年前からコンピューター化が進むが、災害や事故発生時に乱れたダイヤを元に戻す際に頼りになるのは、今も鉄道マンの熟練の技だ。 「止まったぞ」。ある日の午前7時過ぎ。京阪神の運行を管理する大阪総合指令所(大阪市淀川区)の指令員が声を張り上げた。 前夜から徐行が続いていた湖西線で近江舞子駅(大津市)の風速計が規制値を超えた。騒然とする中、小田進太郎・指令長(36)は、縦軸に駅名、横軸に時分が書かれ、複雑に絡み合う斜線で列車の動きを示したダイヤ上に、色鉛筆で新快速と快速の新たな電車のスジを黙々と引き始めた。 京都方面への通勤客をさばくため、運休区間の手前で折り返す電車を設定したり、北陸方面への特急を東海道線に迂回させたりするなど対応に追われ、ダイヤは見る間