▼安田浩一 ジャングルの秘境・ヒンダット温泉 その温泉は、ジャングルの中にあった。 分厚く茂った熱帯雨林の間を縫うように清流が走り、川際に沿ってコンクリートで仕切られた大きめの浴場がふたつ、ぽかんと口を開けている。何の飾り気もない、野趣に富んだ河原の露天風呂だ。 ヒンダット温泉──タイ中部の街・カンチャナブリーからバスに揺られて約3時間。ミャンマー国境近くに位置する天然温泉である。 頭上で鳥がさえずる。川のせせらぎが響く。樹々が香る。金粉でも振りまいたかのような南国の強い日差しが、温泉場全体を踊るように照らしていた。 すでに先客たちが弛緩しきった表情で湯に浸かっている。大自然に溶け込んでいる。気持ちいいだろうなあ。一刻も早く汗染みのできたシャツを脱ぎ捨てて、湯の中に飛び込みたくなった。 さあ、温泉が待っている。湯けむりが呼んでいる。 極楽は目の前だ。 「死の鉄道」に揺られて 温泉にたどり着
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