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ブックマーク / elmikamino.hatenablog.jp (10)

  • 悼む人々 - 記憶の彼方へ

    イザベラ・バードの日奥地紀行 (平凡社ライブラリー) 今から130年前の1878年(明治11年)に英国人女性イザベラ・バードが日列島を旅した。彼女が歩いて、見て、聞いて、記録した「日」を、それから約100年後の今から約30年前に宮常一が解説した。その「日」は、私にとってほとんど見知らぬ国である。時代が時代なんだから、当たり前だ、と思う一方で、それにしても、その間の変化はあまりにも急激で、それによって得られたものの陰で失われたものの大きさを思うと非常に複雑な気持ちになる。 「イザベラ・バードの『日奥地紀行』を読む」平凡社ライブラリー 133頁 例えば、この挿絵に描かれたものは一体何だろう? これは、イザベラ・バードが「これほど哀れにも心を打つものを見たことがない」と記録し、宮常一が「とにかく通りかかった人たちの慈悲によって一つの霊が浮かばれるようにという行事なのです。このような

    悼む人々 - 記憶の彼方へ
  • 宮本常一が残した10万枚の写真 - 記憶の彼方へ

    常一 (KAWADE道の手帖) 宮常一はこんな笑顔の素敵なおっさんだった。 日の村という村、島という島を歩き続け、膨大な記録を残したとんでもない民俗学者・宮常一は10万枚余りの写真も残した。宮常一の故郷、瀬戸内海に浮かぶ周防(すおう)大島の東和町に、2004年5月18日、「周防大島文化交流センター」がオープンした。そこには、その10万枚余りの写真が一枚残らず収められているという。昭和35年から昭和56年までの間に各地で撮影された「失われた昭和」を記録した宮常一の10万枚余の写真コレクション! いつか必ず見に行こうと思っている。でも、人生何が起こるか分からない。明日、ポックリ逝くかもしれない。なので、少しでもいいからその雰囲気を味わっておきたいと思って、10万枚余から厳選されたという約200枚が収録されたを買った。素晴らしい。 宮常一の写真に読む失われた昭和 かえすがえす

    宮本常一が残した10万枚の写真 - 記憶の彼方へ
  • 飛んでる平仮名:嵯峨本『伊勢物語』*1 - 記憶の彼方へ

    国立国会図書館に行ってみたら(もちろんウェブ)、「貴重書展」をやっていて、以前からちょっと見たかった江戸時代初めに印刷された「嵯峨」と呼ばれる当時の高級に入る『伊勢物語』が展示されていた。が、ウェブ上ではデジタル画像は一枚しか見ることができなかった…。札幌に住んでいると、国立国会図書館にはおいそれとは行けないから残念だ。 『伊勢物語』慶長15年(1610年)刊。古活字版。嵯峨。 国立国会図書館貴重書展 展示No.46 伊勢物語 http://www.ndl.go.jp/exhibit/50/html/catalog/c046.html 何が見たかったかというと、古活字版(木活字版)の「連続活字」*1による平仮名の姿形だった。例えば、「し」が倍角、二倍角相当の丈を持つ伸びやかな姿を見たかった。あった、あった。 しかし、どうも想像していたより大人しい印象だ。そこで他を探してみたら、関西大

    飛んでる平仮名:嵯峨本『伊勢物語』*1 - 記憶の彼方へ
    tinuyama
    tinuyama 2008/04/04
    「みんな手書きじゃなくて、活字だよ。念のため」!
  • 同じ「か」でも:現代の新聞書体 - 記憶の彼方へ

    朝刊(朝日新聞)に目を通していて、ふと平仮名の形が気になった。よく見ると結構凝った書風であることに気づいた。「の」の払いの曲がり具合、「か」と「が」の撥ねの角度などに独特の書風を感じた。 そもそも新聞で使われる書体は雑誌やとは一線を画す、独特の扁平した懐の深い「新聞書体」である。同じ新聞書体でも新聞社によって異なる。ちょっと調べてみた限りでは、多くの新聞社がイワタ新聞書体派とモトヤ新聞書体派に別れるようだ。日経はモトヤ派。ただし読売新聞と朝日新聞は独自書体、毎日新聞はモリサワである。 新聞社向書体(イワタ新聞書体を使用した新聞社) 新聞使用例一覧(モトヤ新聞書体を導入している各社) イワタ、モトヤ、モリサワ三社の概要と各社公式ウェブサイト。 イワタ(『ウィキペディア』) 株式会社イワタ モトヤ(『ウィキペディア』) 株式会社モトヤ モリサワ(『ウィキペディア』) 株式会社モリサワ 試しに

    同じ「か」でも:現代の新聞書体 - 記憶の彼方へ
  • 広告パラダイム - 記憶の彼方へ

    以前、印刷史上われわれは書体的には「築地体パラダイム」のなかにいると書いた。 「築地体パラダイム」(2008-03-24) そのさらに背景に控えるパラダイムが広告であることを知った。 今朝の朝刊(朝日新聞)の国際面で目をひいた記事。「姿消す」という見出しが効果的だった。 私が当たり前だと思っていた新聞紙面をはじめとする雑誌や書籍でも常態となっている「見出し」の使用はたかだか90年の歴史しか持たない。しかもそれは結局のところ、「全紙面の広告頁化」に外ならなかったと、幕末から昭和初期まで100年に及ぶ新聞紙面のタイポグラフィを検証した府川充男氏は断言する(「幕末から–大正の新聞紙面と組版意匠の変遷」、『印刷史/タイポグラフィの視軸』76頁)。 詰まるところ、来広告頁に萌芽した記事の立体化とセンセイショナリズムという組版意匠と編輯の技法が新聞紙面の全体を覆い尽くしていくこと、これこそが近代新聞

    広告パラダイム - 記憶の彼方へ
  • 片仮名の呪力、漢字の呪力、アルファベット漢字 - 記憶の彼方へ

    愛を成就せんがための「護符」と周囲に添えられた漢字片仮名交じりの文言。室町末期の『呪詛秘伝書』から(『組版原論』57頁) これは、府川充男氏が、片仮名の持つ呪力を解説する場面で例に挙げた室町末期の写『呪詛秘伝書』からの資料の一部である。府川氏は他にも具体例を挙げ、民俗学者の網野善彦の「片仮名呪力」説も援用しながら、片仮名が来「言葉の呪力」、「音声の呪力」、「口頭の言語」、「音声の言語」と深く結びついているのではないかと推理している(『組版原論』56頁)。 その面白さもさることながら、私は上の護符そのものに目が釘付けになってしまった。「我君と交わるを念ず」と読むとしたら読むのだろう。護符周囲に添えられた漢字片仮名交じりの文言もさることながら、その護符そのものの漢字の結合が強烈な禍々しさを生み出している。この資料は、片仮名の呪力なるものよりも、漢字の呪力のほうを私に強烈に印象づけた。 こう

    片仮名の呪力、漢字の呪力、アルファベット漢字 - 記憶の彼方へ
  • mmpoloさんの小さな大発見 - 記憶の彼方へ

    mmpoloさんが街角で面白い発見をなさった。是非ご覧いただきたい。 「不思議な句点の使い方」(『mmpoloの日記』2008-03-20) 一目見て、ピンと来た。早速、府川充男著『印刷史/タイポグラフィの視軸』(asin:4916043820)にあたってみた。句読点が現代のように使われ出したのは明治20年代以降であることは以前調べて知っていた(「明治二十年代、そして」)ので、それ以前だろうと見当をつけて、幕末から大正にかけての新聞をとりあげた章「幕末––大正の新聞紙面と組版意匠の変遷」に掲載された数多くの明治一桁代の新聞紙面の図版を見ていたら、そのなかにあった! 図––二十八『東京日々新聞』第五千二百五十一号第八面(部分)の部分 mmpoloさんが発見なさった「不思議な句点」と同じロジックで使われていることがお分かりだと思う。当時(明治一桁代)まだ句読点を使うスタイルは生まれていない。新

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  • 明治二十年代、そして - 記憶の彼方へ

    最近二人の専門家から学んだ深く関連する興味深いことが二つある。二つともある重要な意味でウェブやブログにも関係すると感じている。 デザインとはあくまで「情報を公開する技術」である(主に鈴木一誌著『ページと力』から) 今日の日語の文体と組版の直接のルーツは明治二十年代の文藝書にある(主に府川充男著『印刷史/タイポグラフィの視軸』から) ページと力―手わざ、そしてデジタル・デザイン 作者: 鈴木一誌出版社/メーカー: 青土社発売日: 2002/10メディア: 単行購入: 4人 クリック: 19回この商品を含むブログ (24件) を見る 印刷史/タイポグラフィの視軸―府川充男電子聚珍版 作者: 府川充男出版社/メーカー: 実践社発売日: 2005/11メディア: 単行 クリック: 9回この商品を含むブログ (18件) を見る 二人とも印刷物が専門なので、ウェブやブログのことなど念頭にないと思

    明治二十年代、そして - 記憶の彼方へ
    tinuyama
    tinuyama 2008/03/19
  • ドキュメンタリー映画『Helvetica』(2007)、無個性の個性 - 記憶の彼方へ

    映画のポスター Helvetica [DVD] [Import] アーティスト: Helvetica出版社/メーカー: Plexifilm発売日: 2007/11/26メディア: DVD クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見る 日でもNTTデータなどがコーポレート・タイプ(企業の制定書体)として採用している世界で最も多く使われているといわれるサンセリフの欧文書体のHelvetica(ヘルベチカ、ヘルベティカ)をめぐるドキュメンタリー映画が昨年製作された。すでに欧米各地で上映され、今年に入って日でも女子美術大学で試写会が行われた。知らなかった。 映画『Helvetica』(「小林章のドイツ日記」2007年 05月 26日) HELVETICA(「metabolism」2008.02.20) Helveticaは1957年スイス(スイスのことをラテン語でConfoedera

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  • グーグルが本の電子化で狙う「うまみ」の正体は - 記憶の彼方へ

    以前取り上げたことがあるbookscannerさんによる米国を中心とした「の電子化」をめぐる状況分析報告のなかで、ずっと引っかかりつづけていることがある。 2006-08-14の電子化の「あちら側」 2006-08-28やっぱり、「アナロジー(類推)で考えてはいけない」のかも 2006-09-16「誰が読むんだ?」ってものを、Googleだけはコツコツ読んでる の電子化によってGoogleが目指している当の目的は何かということである。bookscannerさんが再三丁寧に論じてきたように、少なくともそれは従来の図書館にかわるようなネット上の図書館という意味での電子図書館ではない。つまり「人が読むためではない」。bookscannerさんはとりあえずGoogleのやろうとしていることを「を読む」作戦と命名した。では一体何のために、膨大な数のをどんどんスキャンしているのか。Go

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