この本の大前提は「人間の判断は純粋な経済的合理性に基づくわけではない」というものだ(とは言え、『ヤバい経済学 ——悪ガキ教授が世の裏側を探検する』(邦訳、東洋経済新報社刊)や『まっとうな経済学』などの本で提示されているように、経済的要因は大きな役割を果たしている)。※ 『実践 行動経済学』の著者は、選択アーキテクチャという概念を導入している。この用語は、「選択者の自由意思にまったく(あるいはほとんど)影響を与えることなく、それでいて合理的な判断へと導くための制御あるいは提案の枠組み」だと定義されている。この最も単純な例として僕の心に残ったのは、以下のような部分だ。 調査によると、人々がカフェテリアでデザートを取る量は、他の料理とデザートとの相対的な位置関係(場所)に影響されることが示された。「置かれた場所によって食べたくなるデザートの量が変わる」という点について合理的な理由は特にないものの