久々に良い経済書に出会ったね。アルビン・E・ロス著『フー・ゲッツ・ホワット』だ。2012年のノーベル賞受賞者が、副題のとおり「マッチメーキングとマーケットデザインの新しい経済学」について、命が救われる感動的な具体例を引きつつ、分かりやすく説明するのだから、おもしろくないわけがない。「役に立たない」のが通り相場の経済学に、新たな一面を加えてくれる、そんな本である。 ……… 市場は、自然発生的に生まれるが、自由に任せておけば、上手く機能するというわけではない。自由は、欠くべからざる要素であるとしても、それだけでは十分でなく、自由を唱えて済ませられるのは、「思想」までである。市場の限界を見極め、改善を考案することが「科学」としての経済学の役割であろう。 ロス先生の功績は、医学部を出たばかりの研修医を、病院などの研修先に、希望と能力に応じてマッチングさせる「市場」において、最善の方法(受入留保アル