いじめが多発している。あるいはいじめによる自殺が引き続いて明るみに出ている。しかし明るみに出ないいじめによる被害、自殺だけではなく不登校のような場合を含めての被害は、ここ一、二年のあいだに急増したとは思えない。当てになる資料がないので、いつ頃からいじめが増え、あるいは過激になったのかは確かめようがないが、少なくともここ一、二年よりももっと以前からのように思われる。いじめ発生の原因はいろいろあるだろうが、その一つは多数者の中にあって少数者が孤立する状況にあることは確かだ。以前は、と言ってもいつ頃のことかこれもはっきりしないが、クラスに一人のガキ大将がいて、幾人かの弱者を「いじめ」ていた。ガキ大将に二、三の手下がついていることもあったが、それほど多数ではなかった。この種の場合は今日的な意味でのいじめではない。今日的な意味でのいじめは多数が一人の孤立者を集中攻撃することだからである。 ところで話