ボーアとアインシュタイン。もはや、理論というより、世界観を異にする二人の巨人の対決の時が訪れた。1930年、ベルギーのブリュッセルで開かれた第6回ソルベイ会議に二人はのぞんだのであった。キュリー夫人をはじめ当時、世界第一級の科学者が集まる中で、討論の口火を切ったのは、アインシュタインだった。アインシュタインは、量子力学の不完全性を証明する決定的な証拠を提出したのだった。 上の箱は、アインシュタインが提出した思考実験を再現したものである。アインシュタインの思考実験は、量子力学の基礎をなす「不確定性原理」への反論であった。「不確定性原理」とは、人間がミクロの物質の位置と運動の両方を正確に知ることはできないという理論である。たとえば、電子の位置を観測しようとするとき、人間は電子に光を当ててみなければならない。しかし、位置を観測した瞬間に、光は電子をはねとばし、電子の動きを正確に知ることはできなく