今から116 年前の今日、すなわち明治33年(1900)10月22日、33歳の漱石は一緒に渡欧してきた日本人留学生仲間とともに、パリのエッフェル塔に昇っていた。 300 メートルの高さを誇る、名高き鉄塔。その威容はもちろん、展望台へ人々を運ぶエレベーターも、彼らにとっては驚くべき文明の利器であった。 展望台の上から見はるかす宏大で繁華な街並みにも、思わず胸の内で驚嘆の声を上げずにはいられない。漱石は、かつては建築家になろうという志望を持っていたこともあった。それだけに余計に、堅牢な石造りを基礎としながら溢れるような優美さを見せる、宏壮な建築群に圧倒されていたのである。 1850年代から60年代にかけての、G・E・オスマンによる都市改造によってつくり上げられたこの美しい街並みは、骨格基盤をそのままに現今に受け継がれ、21世紀の旅人をも魅了し続けている。 漱石ら一行は、これ以前、現地で開催中の