「あなたの一票が社会を変える」と言われますが、現実にそんなことはまずありません。それでもなお選挙に行く理由はあるのでしょうか? 今日は、外界にまったく影響を与えない行動を取る意味がどこにあるのかを考えます。 心の中の世界を凝視するとき、人は外界の何ものをも本当に見ていない。目は開いており、視界にあるものを感じてはいるが、普通われわれが言う意味での見ることはしない。 古語で言う〈眺め〉るだけだ。しかし、音はちがう。外界の音を聞くことで、人間の内面は逆にしんと静まり、心の中の世界を凝視する目は集中し鋭くなる。 閑(しず)かさや岩にしみ入る蝉の声 『おくのほそ道』のこの句などは、このへんのニュアンスを巧みに表現し得ている点で最もポピュラーな作と言えるだろう。この句の前に置かれた文章で、芭蕉は「佳景(かけい)寂寞(じゃくまく)として心澄みゆくのみおぼゆ」と書いている。私には、澄みゆく心を凝視する俳