1階の奥、中2階から2階、写真左にあるように1階と2階をじかにつなぐものと、三つの階段がこの店の不思議な浮遊感を生み出していた(撮影/岡田晃奈) 本好き、書店好きのあいだに大きな衝撃が走った。青山ブックセンター(ABC)六本木店が6月25日を最後に消える……。 * * * 悲しみも麻痺するくらい、書店の閉店は日常になったが、今回のダメージは大きすぎる。トントンと小気味よく階段を上がっていくあの特異な3階構造。いわゆるセレクト書店のはしりともいえる考え抜かれた棚。東日本大震災が発生するまでは早朝5時まで営業していた安心感。それが失われるというのだ。 「行かない日はなかった」と批評家の佐々木敦さんは言う。 「1986年から4年間、映画館のシネヴィヴァン六本木に勤めていました。20代前半の私にはバブル絶頂期の六本木に居場所なんかなくて、職場から徒歩20秒のABCだけが頼り。毎日新刊書の棚をチ