ブックマーク / blog.livedoor.jp/iseda503 (22)

  • Daily Life:フォードピントの「内部メモ」は技術者倫理教育でどう語られているか

    January 23, 2016 フォードピントの「内部メモ」は技術者倫理教育でどう語られているか フォード社が1970年代に発売していたピントが追突されたときに燃料タンクに引火して炎上しやすい構造上の欠陥を持っていて、死亡事故の被害者に訴えられた、というエピソードは技術者倫理の教科書を中心に広く語られているので、聞いたことがあるという人が多いだろう。さらに、その欠陥設計を修正するためのコストがたいしたことがないにもかかわらず、フォードが内部で費用便益分析をして、安全対策をしない方が安上がりだという判断をした、という逸話もよく取り上げられる。さらには、その証拠のメモなるものの具体的な計算式を見たことがある人もけっこういるだろう。しかし、実はこのメモについて流布している「定説」はかなり事実と異なることがだいぶ前に指摘されている。私自身、これは過去の話だろうと思っていたら、意外にまだ現在の話だ

  • Daily Life:統計的研究に体験談で反論する人と、体験談は証拠にならないと思う人とが話をするためのチェックリスト

    October 22, 2015 統計的研究に体験談で反論する人と、体験談は証拠にならないと思う人とが話をするためのチェックリスト 以下のようなチェックリストを作ってみたので役に立ちそうだと思った方は使ってみてください。 統計的研究に体験談で反論する人と、体験談は証拠にならないと思う人とが話をするためのチェックリスト あなたは以下の主張のどこまでだったら(あるいはどれにだったら)同意できますか。 1 一般論として、人間の体のしくみにはまだわからないことが多い 2 そのため、一般論として、病気は良く分からない理由で治ったり治らなかったりすることがある。 2’この一般論は今問題になっている病気にもあてはまる 3 一般論として、ある治療をうけたあとにたまたま「良く分からない理由で治る」こともある 3’この一般論は、今問題となっている治療と病気にもあてはまる 4 そのため、一般論として、ある治療を

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    tsuka_ryo 2015/10/22
  • Daily Life:演繹と帰納についてのノート

    July 09, 2015 演繹と帰納についてのノート 以前他の分野の研究者の方と仕事をしていて、演繹というのを「普遍命題から個別命題を導く推論」と理解している方がいて、現代ではその意味で演繹を使うことはまずないです、とコメントしたことがある。しかしそういえば、演繹と帰納という言葉の用法はどのように変遷してきているのか、調べたことはなかった。今後綿密な調査は必要になると思うがとりあえず目立つものをならべておく。(数学的帰納法についてベインとサモンの項及び結論部分に追記しました。誤記をいくつか修正しました) (1) Mill, J.S.  Systems of Logic (1843) 英米の科学方法論の教科書として19世紀には非常に大きな影響力を持った。ただし、演繹と帰納の関係についてのミルの解釈は独特で、あらゆる推論は帰納であると主張して論争をまきおこした。「演繹」と「帰納」という言葉

  • Daily Life:社会学における実証主義批判の対象は論理実証主義だったか?

    June 19, 2014 社会学における実証主義批判の対象は論理実証主義だったか? 『現代思想』6月号の「ポストビッグデータと統計学の時代」に寄稿された太郎丸博さんの論考「統計・実証主義・社会学的想像力」(pp.110-121) を読んだ。全体としては同意できる点が多い論考なのだが、論理実証主義をめぐる論点でちょっと気になったところがある。 太郎丸氏は、論理実証主義を「経験的に真であることが検証された命題と、それらの真の命題から論理的に演繹された命題のみにもとづいて科学的な言明は構成されるべきである」(p.112)という立場としてまとめ、それがいくつかの側面から批判されてきたということを(ラカトシュ、ガーフィンケル、ラトゥール、ヘッシーらを文献として引きながら)紹介している。この論理実証主義のまとめは狭すぎる気もするが大きく外しているというほどでもない。 しかし、太郎丸氏は論理実証主義を

  • Daily Life:『神は妄想である』書評(昔書いたもの)

    May 15, 2014 『神は妄想である』書評(昔書いたもの) (リクエストがあったので、かつて『日経サイエンス』に掲載したドーキンス『神は妄想である』書評の長いバージョンを以下に再掲します。途中[  ] でくくってあるところは字数制限のため掲載バージョンではカットした部分です。初出:『日経サイエンス』2007年9月号、110ページ) 神は妄想である―宗教との決別 [単行]リチャード・ドーキンス早川書房2007-05-25 神について聞かれた科学者の多くは「神がいるかどうかは科学の扱う領域ではない」と答えるだろう。実際、宗教との軋轢をさけるにはうまい答え方だ。しかし当に神は科学で扱えない問題なのだろうか。 書でリチャード・ドーキンスはあえて一歩を踏み出し、科学的な仮説としての「神仮説」を検討する。この宇宙の事実についての主張である以上、神仮説からも 予測できることがいろいろある。そ

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    tsuka_ryo 2014/05/15
  • Daily Life:『哲学入門』(1)

    April 26, 2014 『哲学入門』(1) 哲学入門 (ちくま新書) [新書]戸田山 和久筑摩書房2014-03-05 戸田山和久『哲学入門』。いただいてから読み終わるのにずいぶん時間がかかってしまった。 すでに多くの人が指摘していることだが、『哲学入門』というタイトルではあるものの、一般に言われるところの哲学の全体像をつかみたいという人が読むように書かれたではない。しかし、戸田山さんが哲学だと思うものの全体像をできるだけまんべんなく描き出そうとしているという意味では、まさに戸田山さんによる「哲学入門」以外のなにものでもないという言い方もできる。 書は哲学があつかってきたもの、その中でもとりわけ自然科学にのりそうにない「意味」とか「目的」とか「自由」とかを自然科学の枠組みの中におき直そうという試みで、『自然主義哲学入門』とでも呼ぶべきである。もう少し正確に言うなら、『認知科学に

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    tsuka_ryo 2014/04/26
    もはや恒例行事の観がある伊勢田先生の戸田山本書評(まいど助かります
  • Daily Life:いちから聞きたい放射線のほんとう

    April 11, 2014 いちから聞きたい放射線のほんとう いちから聞きたい放射線のほんとう: いま知っておきたい22の話 (単行) [単行]菊池 誠筑摩書房2014-03-15 菊池さんからいただいた。ありがとうございます。お礼が遅くなりました。 書は菊池さんの良心がつまっただと思う。そもそも「放射能」というのが何かよく分からないけど気になる、という知識レベルの人に菊池さんが伝えなくてはいけないと思ったことが、そういう人に伝わるような言葉で簡潔にまとめられている。このレベルの平易さを保つのにはそうとう苦労されたと思う。 第一部の前半では放射線そのものについての基礎知識、後半では等価線量と実効線量の違いなど生体への影響についての放射線医学の基礎知識がまとめられている。第二部はどのくらい何について心配しなくてはならないのかについての菊池さん流の答えが整理されている。 第一部の内容

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    tsuka_ryo 2014/04/11
  • Daily Life:捏造と改竄

    March 14, 2014 捏造と改竄 前項のつづきとして、同じく『応用倫理学事典』の項目として書いた「捏造と改竄」も転載する。こちらは長さもほぼ掲載されたとおりのバージョンとなっている。実際に執筆したのが2006年なので内容もかなり賞味期限が切れている。 ***** 捏造 捏造(fabrication)は研究者の倫理においてもっとも戒められるべき行為として最初に名前があがるものであり、データがまったく存在しないところであたかもデータが存在するかのように装うことを言う。発見物自体が捏造品である場合や、やってもいない実験や調査をやったかのように論文にする場合がこれにあたる。 日において社会問題となった事例としては、2000年に発覚した考古学における捏造事件が記憶に新しい。これは、在野の研究者が石器を自ら埋め、それを人前で掘り出してみせるというやり方で遺跡を捏造したものであり、毎日新聞の独

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    tsuka_ryo 2014/03/15
  • Daily Life:佐藤氏のリプライ

    March 07, 2013 佐藤氏のリプライ 先日のエントリーに著者の佐藤氏自身からリプライをいただいた。せっかくなので以下に掲載する(著者には許諾いただいたことを感謝する)。赤字で若干フォントが小さいのがもとのわたしのコメント、黒字が佐藤氏のリプライである。 ****** 1ヘア自身による発言 さて、佐藤氏(以下著者)がヘアの選好功利主義が規範倫理学理論ではないと主張する根拠を見る前に、ヘア自身がMTで選好功利主義についてどういう発言をしているか確認しよう。 MTにおいてはそもそも選好功利主義という言葉自体がほとんど使われていない。わずかに、功利主義には幸福版と選好版があると述べている箇所(MT, p.103, 邦訳p.155)があるくらいであり、むしろヘアが選好功利主義を伝統的な功利主義の延長線上でとらえていることをしめしている。その他にも、明らかに通常の意味での功利主義について語っ

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    tsuka_ryo 2013/03/08
    伊勢田書評にリプライきてる
  • Daily Life:基礎論

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    tsuka_ryo 2012/06/21
  • Daily Life:欠如モデルの由来と発展(その1)

    February 23, 2012 欠如モデルの由来と発展(その1) 科学技術と社会の関わりを論じる場面で「欠如モデル」という言葉をよく目にする(しない?)が、一体どういう意味なのだろう。いや、典型的な用法は知っているけれども、もともとどういう意味の言葉として導入されたのだろう。そういう素朴な疑問からちょっと調査をしてみたので報告しておきたい。 以下の記述は、科学技術社会論は何についてどういうことを言っている分野か、というくらいの知識は持っていることを前提に書いている。その意味では、「欠如モデル」という言葉をすでに何度か耳にしたことがある人が対象である。まったく聞いたこともない、という方は以下に挙げる教科書などをちょっと見てから読んでいただかないとなかなか理解が難しいだろう。 けっこうな分量になってきたので今回は「その1」ということで最初の部分だけ掲載する。文献情報は最後にまとめて掲載する

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    tsuka_ryo 2012/02/23
    "この3つは相互に深く関わってはいるが、そもそも話題としている領域が違うため、単に「欠如モデル」とだけ言って会話していたらまったく想定しているものが違っていた、などということもあるだろう。"
  • Daily Life:「科学的思考」のレッスン

    November 28, 2011 「科学的思考」のレッスン 「科学的思考」のレッスン―学校で教えてくれないサイエンス (NHK出版新書) 著者からいただいた。ありがとうございます。 第一章から第六章までは科学哲学の紹介、第七章から終章にかけては科学技術社会論の紹介、という構成になっている。科学哲学的な内容としては、境界設定問題、科学的説明、検証理論などのオーソドックスなテーマを取り上げているのだが、「科学的思考」とは何かを考える、という問題設定の下に非常によく消化されていて、「無理に科学哲学にこじつけました」という感じはまったくない。特に、「科学的説明」という、科学哲学の定番の話題の中でもどちらかというと玄人好みの(言い換えれば哲学者以外にとってはどうでもいいような)話題をこの流れの中に自然に組み込んだ第三章は工夫が光る。第六章では「共通原因の原理」が(その言葉は使わずに)解説されている

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    tsuka_ryo 2011/11/30
    "プトレマイオス理論でも、新奇ではないにせよ、将来の惑星の位置についてこれらの工夫をしない理論とは異なる(しかもかなり精度の高い)予測をするわけで、それを成功させるなら十分よい理論と言ってよいのでは"
  • Daily Life:科学哲学会年次大会

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    tsuka_ryo 2011/11/26
    "supervaluationismで二値原理を保存することを認めつつ二値性が成り立たない本質的に曖昧な対象があることも認めるのはおかしいというコメントに形而上学と言語使用は直接は関係ないという身も蓋もない答え方をした"
  • Daily Life:医学と仮説 (つっこみその1)

    September 29, 2011 医学と仮説 (つっこみその1) [2011年10月18日追記:著者の津田さんとのディスカッションの中で、津田さんより、以下のような列挙のしかただと、「これはひどい」とわたしが思うような項目がこれだけの数あるかのような印象を読者に与えるので困る、という趣旨のクレームがありました。そのため、注意書きを書き添えます。以下の事項の中には、わたしがひどいと思ったものから、一応つっこんでおこうというレベルのものまで、さまざまなものが含まれます。内容も科学哲学には限定されません。以下を読む方はそのことをご理解下さい。] 医学と仮説――原因と結果の科学を考える (岩波科学ライブラリー) クチコミを見る 疫学者の津田敏秀さんの著作。以前から疫学の重要性を訴え、たとえば水俣病を中毒事件として扱えばもっとうまく処理できたはずだという議論など、興味深い論点をいろいろ出されて

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    tsuka_ryo 2011/09/29
  • Daily Life:ハーツォグ『ぼくらはそれでも肉を食う』

    July 21, 2011 ハーツォグ『ぼくらはそれでも肉をう』 ぼくらはそれでも肉をう―人と動物の奇妙な関係 Anthrozoologyの。Anthrozoologyは「ヒトと動物の関係学」と訳すのが日の学会の名前とも一致していいのだと思う(もっともヒトと動物の関係学会の英語名称はanthrozoologyではないのだが)が、書ではなぜか「人類動物学」と訳されている。 全体としてのメッセージは、動物に対する態度は、動物愛護の活動家であれ闘鶏愛好家であれその中間のもっと一般的な人であれ一貫していないのが心理的に普通だということで、著者自身による非常に多様な人々に対するインタビューと、さまざまな心理学的知見、社会調査の知見などが紹介されている。自分は「菜主義者」だと答える人の6割がなんらかの肉を24時間以内にべている、という調査結果などがおもしろい。 翻訳は、あとで指摘する細か

  • Daily Life:野崎泰伸『生を肯定する倫理へ 障害学の視点から』

    July 10, 2011 野崎泰伸『生を肯定する倫理へ 障害学の視点から』 生を肯定する倫理へ―障害学の視点から を著者から御恵投いただいた。せっかくなので少しコメントしたい。記事が長いので三つに分けて投稿する。 書は著者が障害者としての自らの体験もふまえつつ、現代倫理学の主流のアプローチに対して「生を肯定する倫理」を打ち出すという意欲的な著作である。障害学と現代英米の倫理学は、非常に近い問題を扱う面もあるにもかかわらず、あまりきちんとした突き合わせがなされてこなかった。その意味で、両方の文献を読み込んだ著者の議論には参考になる視点が多い。 以下は、現代英米倫理学、特に功利主義に近い立場から、野崎氏の論述がどう読まれるのか、という応答である。それにしても、書で扱われているすべての話題に反応するのは難しいので、話題は三つに絞る。一つは「社会モデル」をどう考えるか、二つ目はシンガーをどう

  • Daily Life:月が変わった

    tsuka_ryo
    tsuka_ryo 2010/12/28
    ひとつはDenzin& Lincolnのテキストの第一章にある質的研究の大きな見取り図。一方にポストモダン系が、他方にエビデンスベーストな社会科学を求めるSBR (scientifically based research)運動という新しい動きがあって混沌とした状況
  • Daily Life:ダークエネルギーとか自然主義とかミードとか

    October 13, 2010 ダークエネルギーとか自然主義とかミードとか 昨日は某事前検討会のためまた東京へ。 ダークエネルギーの話とか生態系シミュレーションの話とかきく。ダークエネルギーの総量は空間の体積と比例して大きくなると想定されているので宇宙が膨張し続けるかぎりダークエネルギーも増え続けるんだそうだ。そんなところで気軽にエネルギー保存則が破られていたとは。 私自身は疑似科学に対する哲学的な分析と、科学者の責任について。最先端の研究をになうみなさん相手に「よくしらないことに気軽にコメントしちゃだめよ」という話をしたりとか。境界設定のオルターナティブとしてのベイズモデルに質問いくつか。「科学かどうかが一般人の信念に依拠することになってしまうのでベイズ主義には反対です」というご意見とか。それは事前確率や尤度を導く際の手法次第でどうにでもなります、とお返事。 今日は授業二つ。レジュメを

  • Daily Life:あいまい

    tsuka_ryo
    tsuka_ryo 2010/09/04
    あいまい述語論理は論理学者と科学哲学者で視点が違う
  • Daily Life:表面的類推

    July 07, 2010 表面的類推 なんとか今学期も先が見えてきた。あと2週間。 午前の授業はベックのリスク社会論。邦訳が読みにくいので英訳にしぼって紹介。つかみどころのない文章だが、だからこそ影響力を持ったのか。リスクの定義は変だし、社会的合理性なんて定義すらされていないし。 午後の演習はDunberの「生体内」における科学の認知プロセスの研究。いろいろなラボでミーティングに参加させてもらい、発言をコーディングして分析する、という手法で実際にどういう推論が使われているかを明らかにしようというもの。ちょっとしらべたら日語でも創造性研究の文脈で紹介している総説記事発見。 www.nii.ac.jp/journal/pdf/05/05-06.pdf おもしろいのは、いわゆる構造の類似性による類推ではなく、表面的な類似性に基づく類推が頻繁に使われるという指摘。つまり、実験がうまくいかなかっ

    tsuka_ryo
    tsuka_ryo 2010/07/07
    午前の授業はベックのリスク社会論。邦訳が読みにくいので英訳にしぼって紹介。つかみどころのない文章だが、だからこそ影響力を持ったのか。