ブックマーク / book.asahi.com (11)

  • 岸政彦「街の人生」書評 優しく聞きとる、隣人の生活史|好書好日

    街の人生 [著]岸政彦 著者の岸政彦は、前著『同化と他者化』において、丁寧な聞き取りと見事な分析で戦後沖縄の社会を浮き彫りにした、いま最も注目すべき社会学者だ。最新作『街の人生』は、実にユーモラスな一冊に仕上がっている。 書の構成はとてもシンプルだ。外国籍のゲイ、ニューハーフ、摂障害の女性、シングルマザーの風俗嬢、ホームレスの男性の5人の生い立ちを聞き取り、インタビューの模様をほぼそのまま掲載するというもの。分析らしいものはほとんど加えられない。にも関わらず書は、読み終えた者の社会認識を改めさせる力を持っている。 「我々が空想で描いて見る世界よりも、隠れた現実の方が遥(はる)かに物深い」——。書冒頭では、柳田国男『山の人生』のこのような一節が紹介されている。『山の人生』は、「山へ入って還って来なかった人間」や山間部で生きる少数者たちの逸話を聞き取った柳田の初期作品。社会の周縁を漂泊

    岸政彦「街の人生」書評 優しく聞きとる、隣人の生活史|好書好日
    tsuka_ryo
    tsuka_ryo 2015/06/23
  • 開沼博「はじめての福島学」書評 データを共有し「イメージ」正す|好書好日

    はじめての福島学 [著] 開沼博 東日大震災の年に『「フクシマ」論』で衝撃のデビューを果たし、以後、被災地の「内側」からのメッセージを全力で発信し続けてきた著者の、震災から4年目にしての新境地。 元来彼は質的な調査を身上としてきた人だが、このではたくさんの統計データをもとに、一部で流布している福島のイメージがいかにズレているかを分かりやすく解説している。たとえば、福島県は農業県のイメージがあるが、実は一次産業従事者は1割以下で、二次産業が3割、三次産業6割である、など。 研究者が自分のスタイルを変えるというのは、相当な覚悟と努力が必要な一大事である。そんな「変身」を開沼にもたらしたのは、震災後4年間の経験だったようだ。全国各地での講演会やメディア出演の際の反応は、福島の姿がほとんど知られていないという現実を、彼に突きつけた。 基的に前向きのトーンを保ってはいるものの、行間からは、開沼

    開沼博「はじめての福島学」書評 データを共有し「イメージ」正す|好書好日
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    tsuka_ryo 2015/06/03
  • 「ヒトラーと哲学者」書評 言葉生み出す行動にも責任を|好書好日

    ヒトラーと哲学者 哲学はナチズムとどう関わったか 著者:イヴォンヌ・シェラット 出版社:白水社 ジャンル:哲学・思想・宗教・心理 ヒトラーと哲学者―哲学はナチズムとどう関わったか [著]イヴォンヌ・シェラット 冒頭に哲学はドイツ文化の象徴であり哲学者は名士であるとの言葉が出てくる。これまで精査されてこなかったナチスと哲学者との関係に著者が切り込んだ背景には、まさにこのような理由があった。ドイツ人の想像力に甚大な影響を与えてきたのは紛れもなく哲学者だ。ならば彼らがナチに如何(いか)なる態度で接したのかを検証することは、ドイツそのものを浮かび上がらせる作業となるだろう。 第一部ではヒトラーに協力した哲学者の振る舞いが詳述され、第二部ではヒトラーに屈せず抵抗し、亡命や処刑といった憂き目にあった哲学者の苦悩と悲劇を描いている。衝撃が大きいのは第一部、特にシュミットやハイデガーといった大物がナチに

    「ヒトラーと哲学者」書評 言葉生み出す行動にも責任を|好書好日
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    tsuka_ryo 2015/03/29
  • 書評・最新書評 : 神と肉―日本の動物供犠 [著]原田信男 - 三浦しをん(作家) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    ■米の豊作を願い捧げられた命 肉が好きだ。しかし、日では明治になるまで、ほぼ肉はしなかったと聞いたことがあり、「すみません、動物をばくばくべちゃって」と少々うしろめたく思っていた。 だが書によると、日人は縄文時代からずっと、肉をべてきたのである。「これを持っていれば、肉をべても許される!」という、諏訪大社が発行するお札(ふだ)(「鹿免(かじきめん)」)まで存在した。やっぱりなあ、肉はおいしいもん。抜け道を探してでも、べたいものです。 ではどうして、表立って肉をべにくい風潮があったのかというと、飛鳥時代から国家が殺生と肉を禁じてきたからだ(ただし、当初は猪〈いのしし〉や鹿などの野獣をべるのは許されていた)。禁令が出た背景には仏教思想もあるようだが、一番の要因は、米を安定的に生産するためだった。稲は栽培が難しく、豊作を目指して、さまざまなタブーが人々に科された。「動物を

    書評・最新書評 : 神と肉―日本の動物供犠 [著]原田信男 - 三浦しをん(作家) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
    tsuka_ryo
    tsuka_ryo 2014/06/10
    "禁令が出た背景には仏教思想もあるようだが、一番の要因は、米を安定的に生産するためだった"
  • 本の記事 : 浅田彰「構造と力」 マルクスをポップ化 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    難解なはずの現代思想家の理論を明快に整理した『構造と力』が、1983年に出版された。ベストセラーとなり、既存の学問領域にとらわれないニューアカデミズムの「聖典」の一つに。簡単に読めるではないはずなのに、が醸し出す軽やかな雰囲気に多くの人がひかれた。実は、著者の浅田彰がヒントにしたがある。 ◇ 僕が26歳の時のです。当時は現代思想といってもすべてがごた混ぜだったので、それさえ頭に入れておけば知の世界を自由に渉猟できるような明快な地図が描きたかったんですね。 そのためには哲学的な正確さを多少は犠牲にしてもいい。そもそも僕は哲学に興味がなかったんです。マルクスの言ったように、哲学は世界をさまざまに解釈してきた。観念論か唯物論か、解釈はどうにでも変更できる。しかし大切なのは世界を変革することなのだ、と。そのためには、現実に対するクリティーク(批評・批判)や、別の現実を構想するビジョン――そ

    本の記事 : 浅田彰「構造と力」 マルクスをポップ化 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
    tsuka_ryo
    tsuka_ryo 2013/04/01
  • 「フランコと大日本帝国」書評 イメージの変遷鮮やかに|好書好日

    フランコ統治下のスペイン政府協力のもとに構築された日の対米諜報網の全貌、フィリピンをめぐって錯綜する思惑−。虚々実々の国際政治の暗部に迫り、第2次世界大戦下の日とスペ… フランコと大日帝国 [著]フロレンティーノ・ロダオ 第2次大戦のヨーロッパ戦線で、日は銃こそ手に取らなかったものの、中立国においていわゆる武器なき戦い、すなわち外交戦、情報戦を展開した。その一つが、書の舞台となったフランコ総統治下の、スペインである。 フランコは、第2次大戦の半年前に終結したスペイン内戦で、ヒトラー・ドイツとムッソリーニ・イタリアに、多大の援助を受けた。その恩義もあり、大戦中は終始中立を保ちながら、さまざまな面で独伊に協力を惜しまなかった。そのため、独伊の同盟国たる日に対しても、当初から好意的な態度を示していた。 書はまず、セラーノ・スニェル外相が駐西公使須磨弥吉郎の要請に応じて、英米でのスパ

    「フランコと大日本帝国」書評 イメージの変遷鮮やかに|好書好日
    tsuka_ryo
    tsuka_ryo 2013/03/12
  • 本の記事 : 法哲学者ドウォーキン氏を悼む 長谷部恭男・東京大教授 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    14日、81歳で亡くなったロナルド・ドウォーキンは現代の法哲学・政治哲学界に屹立(きつりつ)する巨人である。革新的かつ論争的なスタイルで英米圏のリベラルな思潮を主導し、合衆国最高裁の動向にも大きな影響を与えた。 アイザイア・バーリンやジョン・ロールズ等のリベラリズムの主流は、価値の多元性を強調し、多様な世界観の公平な共存を提唱する。これに対してドウォーキンは、価値の世界は全体として整合していると言う。自由と平等、社会生活の道徳と個人的倫理とは衝突しない。何が責任ある態度か、何が正しい政策か、すばらしい人生とは何かは、すべて矛盾なく支え合っている。人が自分の生を意味あるものとして生きるには、すべての価値は統一された姿で捉えられなければならない。 1977年に出版された最初の論文集『権利論』は、支配的思想であった法実証主義と功利主義を根底的レベルで批判した。法実証主義によれば、法は社会的事実で

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    tsuka_ryo
    tsuka_ryo 2013/02/21
    「何が法かは道徳と切り離して判断できない」法令や先例は互いに衝突する。そのとき裁判官は、法令や先例を全体として整合的に説得的に説明する道徳原理の体系を構築し、事案に適切な答えを与える。
  • 「ゲーム理論による社会科学の統合」書評 多くの学問統合、自信満ちた構想|好書好日

    ゲーム理論による社会科学の統合 [著]ハーバート・ギンタス 社会科学の統合とは何と強気な。アシモフの未来SFには人類史の将来を予測する、歴史心理学なる統合人間科学が登場するが、ついにそれが実現……とまではいかない。が、著者はゲーム理論がその基盤となると断言するのだ。 すごいぜ、と文を開くと、いきなり細かい式や証明がずらずら並んで涙目だが、とりあえずは飛ばしても大丈夫。基的に著者は、合理的個人の相互作用を描くゲーム理論モデルを使えば、各種の基的概念が基礎付けられることを示す。後半の章でそれを組み合わせた複雑な社会事象の説明を例示。そして十二章以下で、統合に向けての大きな道筋をいくつか素描してみせる。 統合対象分野は、生物学、心理学、経済学、社会学等とやたらに広い。読む側にとってもハードルは高めだが、その大胆な構想力は爽快だ。著者がそこに見る共通の枠組みは明確で説得力があるし、その可能性

    「ゲーム理論による社会科学の統合」書評 多くの学問統合、自信満ちた構想|好書好日
    tsuka_ryo
    tsuka_ryo 2011/09/06
    "基本的に著者は、合理的個人の相互作用を描くゲーム理論モデルを使えば、各種の基本的概念が基礎付けられることを示す" んー。
  • 宇野常寛「リトル・ピープルの時代」書評 小さな物語に依存「拡張現実の時代」|好書好日

    リトル・ピープルの時代 [著]宇野常寛 書は『ゼロ年代の想像力』で華々しいデビューを飾った若手批評家の三年ぶりの書き下ろし評論集である。テーマは再び「想像力」だ。議論の構えは大きい。震災後の現状をふまえ、宇野はまず村上春樹を参照する。ビッグ・ブラザーが体現していた「大きな物語」が失効し、人々は目先の「小さな物語」に依存しようとする。 『1Q84』で村上が描いた「リトル・ピープル」こそは、意図も顔も持たずに非人格的な悪をもたらす「システム」の象徴だ。今必要なのは、制御不能におちいった「原発」のような巨大システムに対する想像力なのだ。 しかし宇野は、村上作品に頻出する、男性主人公の自己実現のコストを母なる女性に支払わせるというレイプ・ファンタジィ的な構造を批判する。その構造に潜むナルシシズムが、リトル・ピープルの悪を隠蔽(いんぺい)してしまうからだ。 ここに至って、書の中核をなす二つのテー

    宇野常寛「リトル・ピープルの時代」書評 小さな物語に依存「拡張現実の時代」|好書好日
  • 【レビュー・書評】「ボランティア」の誕生と終焉(しゅうえん)―〈贈与のパラドックス〉の知識社会学 [著]仁平典宏 - 書評 - BOOK:asahi.com(朝日新聞社)

    「ボランティア」の誕生と終焉(しゅうえん)―〈贈与のパラドックス〉の知識社会学 [著]仁平典宏[評者]中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史)[掲載]2011年5月22日著者:仁平 典宏  出版社:名古屋大学出版会 価格:¥ 6,930 ■矛盾はらむ「贈与」、境界解体の先に ボランティアとは何か――。 「偽善だろ」「自己満足なんじゃないの」といった冷笑が、ボランティアには向けられる。その言説の核心には「他者のため」という「贈与」の問題がある。 贈与はなかなか厄介な行為だ。受け取った側は、行為者の真の意図を考えてしまい、不安になる。「もしかしたら別の意図があるんじゃないのか」という疑心暗鬼が生まれる。一方で、贈与した側も相手が「当に喜んでいるのか」「迷惑だったんじゃないか」という不安を抱く。 さらに贈与には「返礼」という「反対贈与」が伴う。これは物質的な返礼がなくても、贈

    tsuka_ryo
    tsuka_ryo 2011/05/31
    評者は中島岳志氏
  • 【レビュー・書評】科学の科学―コレージュ・ド・フランス最終講義 [著]ピエール・ブルデュー - 書評 - BOOK:asahi.com(朝日新聞社)

    科学の科学―コレージュ・ド・フランス最終講義 [著]ピエール・ブルデュー[評者]斎藤環(精神科医)[掲載]2011年1月9日著者:ブルデュー  出版社:藤原書店 価格:¥ 3,780 ■科学の現場の「構造」、明らかに 1998年、新3種混合ワクチンの接種が自閉症の原因となるとする論文が発表され、大きな反響を呼んだ。ところが最近の調査で、この報告が執筆者である医師のでっちあげだったと判明した。なぜ科学者がこうしたスキャンダルを起こすのか。 私たちは科学を厳正かつ中立な、自律性の高い学問だと考えている。しかしその科学にすら政治や人間関係といった不純な要因が影響を及ぼしてしまう。 社会学者ブルデューによれば、それは科学の現場が来的にはらみ持つ、構造的な問題だ。この最後の著作の書で、ブルデューは彼の思想のキーワードでもあると言うべき「界」「ハビトゥス」「文化」といった諸概念を自在に駆使して

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