「恵文社 一乗寺店」は、レトロな喫茶店のように、人々を優しく迎え入れてくれる。木造店舗と木製家具の木の温もりに、そっと包み込まれるような心地がする。 店長の堀部篤史さん(1977年生まれ)は、自著『本を開いて、あの頃へ』(mill books)のなかで、本や読書への思いを次のように綴っている。 「本や、それを読むという行為は他の何かと交換可能なものではない。検索して情報を知る以上の楽しみがそこにはあるということを自分自身の読書体験をもとに証明したかった。少なくとも読書やレコード蒐集の楽しみを知るものとして、振り返って気づく前にこの変化の流れに一石を投じたい。それを意識してから僕の読書はノスタルジーに取り憑かれた。 (略) 本を読むという行為だけは懐かしいものにしたくない。感傷的だと笑われるかもしれないが、そんな思いがこの本の至る所に込められている。」 (序文「読むことへの偏愛、読書そ