わたしが大日本雄弁会講談社へ入社したのは昭和21年のことです。それから半世紀以上経った今も現役で出版業界の片隅に生きており、われながら、長い編集者人生だと思っています。 本書『戦後の講談社と東都書房』は90歳にしての処女出版となりましたが、大勢の作家の本を数多く出版してきた者が、まさか自分自身で本を書くことになるというのも不思議なものです。 長らく出版業界に身を置いていると、往々にして信じられないことに出くわしますが、今回の自著出版はわたしにとって一番の驚きでした。 わたしが『キング』や『日本』の編集長となった頃、一般の大衆小説(現代もの、時代ものと呼ばれた)や推理小説(当時は探偵小説)は純文学と比べて一段も二段も低く見られ、軽蔑すべき通俗読物とされていました。現在のように面白ければどんなジャンルの小説でも読まれる時代ではありませんでした。 このように小説や作家を型にはまったレッテルで割り
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