「自殺するような人ではなかった」—亡くなったキャリア官僚を知る人はみな、口をそろえてこう言った。謎の死の背景にあった国家間の情報戦。完全秘密主義の内閣情報調査室をレポートした。 まるでミステリー小説 4月1日、午後3時7分。 険しい表情で首相官邸へと入っていく二人の男の姿があった。一人は北村滋・内閣情報官。内閣情報調査室のトップだ。 3時17分、同行していた防衛省の木野村謙一・情報本部長が先に官邸を出た。そこからさらに10分間、北村氏は安倍首相と「密談」を続けたのだった。 「会談内容は極秘扱いですが、もちろん、同日朝に自殺した内調大物メンバーの件に間違いありません。防衛省の情報本部長が同席したことからも、国家機密漏洩の可能性も含めて、緊急の会談が持たれたのでしょう」(官邸担当記者) 時計の針を7時間前に戻そう。 4月1日、午前8時前。東京都渋谷区恵比寿の閑静な住宅街に、消防車のサイレン音が