→上巻を購入 →中巻を購入 →下巻を購入 「マンガ日本の古典」シリーズから出ているさいとう・たかをによる『太平記』である。 漫画だから吉川英治版をもとにしているのかなと思ったが、そうではなかった。オリジナルの『太平記』をかなり忠実に漫画化というか、劇画化しているのである。 怨霊話だらけの第三部を短くするとか、軍勢の数の誇張や史実との違いを注記するとかいったアレンジはほどこしてあるが、ほぼそのままなのだ。 詠嘆調の場面や、クライマックスの場面では原文が書きこんであって、禍々しい字面が迫力をいや増しに増している。意味はわからなくとも絵を見れば一目瞭然だから、古文が不得意な人は擬音の一種と思えばいい。 巻ごとに起承転結があって、ぐいぐい引きこまれる。古典の漫画化としては大和和紀の『あさきゆめみし』と双璧をなすかもしれない。 順に見ていこう。 上巻は後醍醐帝即位から鎌倉幕府滅亡までを描く。後醍醐帝