『宗祇諸国物語』(西村市郎右衛門作か、貞享二[一六八五]刊)巻五-五 ※国文学研究資料館所蔵 (CC BY-SA) 新日本古典籍総合データベース 【原文】 或る暁《あかつき》、便事《べんじ》の為《ため》、枕に近き遣戸《やりど》押《お》し開け、東の方を見出《みい》でたれバ、一反計り向かふの竹藪《たけやぶ》の北の端《はし》に、怪《あや》しの女一人立てり。 背《せい》の高さ壱丈もや有らん。 顔より肌《はだへ》透き通る計り白きに、白き単衣《ひとへ》の物を着《き》たり。 其の絹、未《いま》だ此の国に見慣れず、細かに艶やか也。 糸筋《いとすじ》赫奕《かくやく》と辺りを照《て》らし、身を明《あき》らかに見す。 容貌《ようばう》の端厳《たんごん》なる様《さま》、王母《わうぼ》が桃林《とうりん》にま見え、かぐや姫の竹に遊びけん、斯《か》くや有らん。 面色《めんしよく》によつて年の程を窺《うかゞ》はば、二十歳