『木曽街道続膝栗毛三編下巻』(十返舎一九作、文化九[一八一二]年刊) 続膝栗毛 3編 木曽街道膝栗毛 下 - 国立国会図書館デジタルコレクション ※この記事では国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しています。 【原文】 コレ、見なされ、爰《こゝ》に置くさかい、明日取つて行かんせ。 良《ゑ》いか、爰《こゝ》じやに/\」 ト、釣仏壇の障子を開けて入れて置く所を弥次に見せて入れ置く。 此の宿ハ、座敷にも、台所にも、六畳ばかりの所、たつた一間《ひとま》。 押し入れと言ふ物も無く、破れ障子を横にして囲ひたるハ、夜具《やぐ》などの置き所と見へたり。 流し元に亭主と女房、何やらぶつ/\囁《さゝや》き、夜食《やしよく》の拵《こしら》へするとて、煮《に》るも炊くも鍋一つ。 漸《やうや》うの事にて出来、 亭主「サア、御方《おかた》、膳立《ぜんだ》てセんかい」 女房「飯椀《めしわん》が一つ