《哲学者にはあらかじめ守りたいものがあり、それを守ることを目的として理屈を並べている》という思い込みは、哲学の文章を誤読させやすい。実際には書かれていないことを行間から変に読み取ってしまい、それへの攻撃欲が増すことで、文章を精確に読めなくなってしまう。 例をひとつ挙げておこう。リベットの実験によって自由意志は否定されたという話は、メディアでよく紹介される。だが、詳細を見ていくと、この話には多くの飛躍があることが分かる。そこで、幾人かの哲学者は、リベットの実験からは自由意志が否定されないと主張する文章を発表する。 ここから、どんなふうに誤読が始まるのか。一部の読者は、そうした文章の書き手が自由意志を守りたがっているという背景を勝手に読み取る。そのうえで、《自由意志を守りたがっている哲学者が、自由意志を否定する科学に抵抗している》という、ステレオタイプで誤ったストーリーを思い描く。 しかし、注
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