●橋本治が亡くなったというニュースは大きなショックだ。橋本治が平成を越えることがなくなった。 持続的な読者ではなく、最近のものはあまり読んでいないし、たまに読んだとしてもそれほど興味がひかれることはなかった。だけど、十代の頃には熱心に読んだし、とても大きなインパクトを得た。その頃に(実際には二十歳ちかく離れているのだけど)自分のすぐ上の、兄のような位置にある作家だと感じていた。だからなのか、橋本治という名前には、いつまでもずっと「若い」作家のような感覚が貼り付いていた。 人が人の存在に頼る、というようなことがある。ぼくは、橋本治に会ったことはなく、話したこともない。それでもどこか、橋本治という人が存在していること、「その人がこの世界にいる」という事実に頼って生きてきたという感じがある。そのような橋本治が消えた。 ●下に引用する橋本治が書いていることは、ぼくの実感ととても近い。 《平成の三十