現存する最古の和歌集、万葉集。7世紀から8世紀にかけて詠まれた歌を集めています。詠み手は、天皇から名もない庶民までさまざま。二十巻、四千五百首あまりに及ぶ、当時の歌の集大成です。「春過ぎて 夏来るらし 白たへの 衣干したり 天の香具山 持統天皇」。――春が過ぎて夏が来たようだ。あの天の香具山に、白い衣が干してある。「銀も 金も玉も なにせむに 優れる宝 子に及かめやも 山上憶良」。――銀も金も宝石もなんであろう。子どもに優る宝などあるだろうか。 万葉集が作られたのは、飛鳥時代から奈良時代にかけてです。当時、都では、天皇を中心とした中央集権的な国づくりが進められていました。そんななか登場したのが、政治の節目や行事のときなどに歌を詠む、「宮廷歌人」と呼ばれる人たちです。その一人が、柿本人麻呂です。皇室の人々を讃える歌や、死を悼む歌などを詠みました。若くして亡くなった皇子を思い出の地でしのん
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