三重県志摩市の志摩市民病院は、志摩市南部の在宅医療で重要な役割を担う中核病院だ。しかし毎年7億円の赤字を垂れ流し、2015年12月、医師3人が一斉退職。唯一残った医師は大卒後7年目の若手医師・江角悠太さん(当時34歳)だけだった。江角さんは病院を建て直すため、「どんな患者も絶対に断らない」というムチャなアイデアを実行に移した――。(前編/全2回) ※本稿は、『プレジデントFamilyムック「医学部進学大百科 2020完全保存版」』の掲載記事を再編集したものです。 毎年赤字7億円を垂れ流す市民病院が奇跡の復活できた理由 2018年度の医療費は過去最高の42兆6000億円——。2019年9月26日、厚生労働省はこの数字を元に「再編統合について特に議論が必要だ」と主に地方にある全国424の公立病院の実名を挙げた。膨れ上がる医療費を前に経営効率化を促すものだが、名指しされた病院や地域住民には「病院