『指輪物語』の舞台となる場所は地球である。しかしその舞台となる時代は、著者が創造した歴史上におけるアトランティス崩壊後にあたる遠い昔であると設定されている[3]。トールキンはこの背景世界に、古英語のmiddanġeard(ミドガルド)を現代語化した英語名Middle-earth(中つ国)を与えた[4]。物語は冥王サウロンの作った力の指輪の存在を軸に、ホビットやエルフ、人間、ドワーフ、魔法使い、ゴブリン(トールキンはほとんどの場合オークと呼ぶ)、トロルなど、多彩な種族を巻き込んで展開する。ホビット庄で静かに始まった物語は、やがて中つ国全域を舞台として、世界の運命を決する指輪戦争の成り行きを辿ることになる。本編の他に、豊富な歴史的および言語学的背景資料を提供する、六つの追補編が添えられている[5]。 『指輪物語』はトールキンの他の作品と同様、その文学的な主題と起源に対し、多くの研究者によって広
