先頃、第3巻も発売となり、とても盛り上がっている大西巷一氏のマンガ『乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ』(双葉社)。本作は15世紀のボヘミアを舞台に描く戦争史劇大作です。 そもそも「ボヘミアってどこ?」と、多くの人は思うでしょう。しかも、この作品が描くのはフス戦争。日本人にはまったく馴染みがありません。 フス戦争とは、腐敗したカトリックを批判したヤン・フスを源流とするキリスト教の改革派である「フス派」と、それを異端とするカトリックを擁護する「神聖ローマ帝国」との戦いです……いえ、この説明も十分ではありません。そこに、ドイツ騎士団やらポーランド王国やらリトアニア大公国やら、当時の強国や新興勢力も複雑に絡み合い、さらに民族的な対立もあったりと、泥沼の中で行われた戦争です。 ひとつだけいえるのは、お互いの陣営の結集軸として“宗教”があること。ゆえに、敵対者に対しては非道の限りが尽くされるわけです