ディストピアというのは、大多数の人間(または“人間”とみなされるごく一部の人間)に対して過適応した社会で、その大多数でない少数派の人間がとても生きづらくなる世界、で、だから、その大多数の人間にとってはディストピアはユートピアであるのだけれども、しかし、ごく少数の人間にとってもディストピアは救いでもある。 少数派の人間。うまく生きることを許されず、社会の中で“すりつぶされ要員”と確保されているにもかかわらず、ディストピアでない社会においては『自己責任』という形で自分で自分をすりつぶさせられて、死んだり苦しんだりすることも『自分の選択でやったこと』とされてしまう。だけどディストピアの中では、社会が責任をもって、社会がすりつぶしてくれる。 少しだけましだ。 一九八四年 (ハヤカワepi文庫) 作者: ジョージ・オーウェル,高橋和久出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/08/01メディア