ひさびさに文章の力というものを感じた。水村氏は文句なく巨匠だ。 「処方箋」には必ずしも全面的に賛同できないところもあるが、強烈な問題提起力の前にそんなことは小さい問題だと感じた。 書評、となると容易なことではないので、以下まったく断片的感想を。 紀伊国屋でも平積みになっているし、Amazonでも総合84位。こういった硬派ノンフィクションとしては異常な人気のようだ。しかし、バイリンガルでないにしても英語である程度自由にコミュニケーションができる人でないと、著者の危機感をストレートに共有するのは難しいかもしれない。案の定というか、Amazonの書評にもまったく見当外れな批判が一つならず投稿されている。 本書の大きな貢献の一つは、アルファベットを唯一最高の言語表記体系とする19世紀西欧の言語進化史観が明治政府の国語政策に浸透し、その地下水脈が米軍の占領のどさくさにまぎれて跳梁してして日本語の破壊