イギリスの食文化形成史の本。大変面白く読んだ。イギリス料理,イギリス人の食生活に関するイメージをかなり修正するものだと思う。 もちろん,すでに紅茶や砂糖に関する歴史的な経緯やイギリス「伝統食」のフィッシュ・アンド・チップスの起源などについては,予備知識があった。しかし,たとえば紅茶と一緒に摂取された「砂糖」に関して,イギリスでは非常に早くから大陸ヨーロッパの倍以上の量が消費され,今でも続くイギリス人の甘いもの好きにつながっていることや,フィッシュ・アンド・チップスのフライド・フィッシュとポテトチップスが別々の起源を持ちながら,19世紀末には一緒になって労働者階級・庶民の外食として隆盛をきわめていくことなど,はじめて知ったことも多々あった。 誰もが疑問に感じる「イギリスの食事はなぜまずいのか?」について,川北氏は,もとからまずいとささやかれていたイギリスの食事の悪評が決定的になったのは,19