「サーフィンは単なるアウトドア・スポーツではない。ウェイ・オブ・ライフなのだ」とか「サーフィンはトータルなライフ・スタイルだ」と、アメリカ製のサーフィン映画のなかでナレーターがいつもくりかえしている。そのとおりだ。サーフボードに乗って、一度でもいいから波をつかまえ、すべり降りた経験を持ってしまったら、サーフィンの魅力に完全にひっかかってしまい、以後、サーフィンはウェイ・オブ・ライフにならざるをえない。 サーファーは、朝早く起きる。暗いうちから起き出し、海岸へいく。一日二十四時間を自分のためにとても有効に使おうと思ったら… 底本:片岡義男エッセイ・コレクション『僕が書いたあの島』太田出版 1995年 『サーフシティ・ロマンス』晶文社 1978年所収
一九四〇年の十月、日本軍はフランス領インドシナの北部へ進駐した。現在のヴェトナム、カンボディア、そしてラオスなどの一帯だ。中国を支配しようとしていた日本は、この進駐によって東南アジアから中国へ物資が入るルートを絶とう、という目的を持っていた。アメリカやイギリスは、当然、日本のこの動きを警戒した。シベリアへ出ようか、それとも東南アジアにしようかと迷っていた日本は、東南アジアへ出ていくことを決定した。 一九四一年の七月、今度はフランス領インドシナの南部へ、日本軍は進駐した。フランス政府との協定にもとづいた進駐だったが、これ… 初出:『映画を書く──日本映画の謎を解く』ハローケイエンターテインメント 一九九六年 底本:『映画を書く──日本映画の原風景』文春文庫 二〇〇一年
ある夏の日、僕は友人といっしょに地図を見ながら、相談した。ふたりでオートバイをつらね、どこをどう走ったらいいだろうかという相談だ。いろんなアイディアが出つくして、最終的にきまったのは、この川に沿って走ってみよう、ということだった。地図のなかから選び出した一本の川を、その源流から最終的な河口まで、オートバイでたどりつつ走ってみようというのだ。 源流がある山のふもとの村で、僕は友人と落ち合った。二台のオートバイは、夏の日のなかを、その川の源流をめざして、山裾を登っていった。源流には、思いのほかあっけなく、到達することが出来た。これがやがてあの川になるとは、とうてい想像もつかないようなたたずまいで、源流は静かにささやかに、そしてさすがにきれいに澄んで冷たそうに流れていた。 その冷たい澄んだ水で水浴びをし、さあ、みそぎはすませた、などと言いながら、源流の流れに沿って、下っていく。最初に出会う橋は、
この短い文章のためにぼくにあたえられているテーマは、「男が結婚したいと思う女性には共通項がある」というテーマだ。ぼくは困った。共通項がある、と断定してある。しかもその断定は、男性の側から一方的になされたものであるらしい。さらに、ぼくは困った。 このテーマのとおりに書く必要はないのだから、共通項なんてなにもない、ということを書いてもいいのだが、ぼくなりに考えながら書いていくとすると、まず逆に考えることからはじめてみよう。 逆とは、つまり、男性が結婚したくないと思うような女性には、共通したなにかがある、と… 底本:片岡義男エッセイ・コレクション『「彼女」はグッド・デザイン』太田出版 1996年 初出:『きみを愛するトースト』角川文庫 1989年
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く