日本とドイツの過去に対する態度を比較して、「ドイツは徹底的に過去の償いをしている。だから周辺国は文句を言わないのだ。それに比べて日本は…」という言説をたびたび見かけます。これに対して日本の愛国者は「日本も過去の償いをしている。ただドイツとはやり方が違うのだ」と反論します。 しかしこの議論は重大な点を見逃しています。ドイツの周辺国がドイツの過去を赦しているように見えるのは、ドイツが反省して過去を清算したからではありません。ドイツの周辺国にはドイツの過去を糾弾する資格がないからなのです。 先日チェコで大統領選が行われ、左派のミロシュ・ゼマン氏が右派のカレル・シュワルツェンベルグ氏を接戦の末破りました。チェコの未来を決めるこの選挙には、実は60年以上前の過去が影を落としていました。1月中旬に行われたテレビ討論会で、シュワルツェンベルグ氏はチェコの暗い過去を指摘して国論を二分する感情的な軋轢を生じ