うちの父方の祖父が、典型的な昭和のダメ男だった。父の家庭は祖母の生計で成り立っていた。祖父は酒と麻雀、競馬、ギャンブル狂いだった。賭け事はかなり強い。将棋も強い。仕事はしていたのかわからない。かなり年がいってからは個人タクシーをやっていた。その前は何をしていたのだろう。 祖父はプロ野球の選手を目指していたそうだ。祖父いわく、身長が足りなくて入団できなかった。父も叔父もその話を疑っていたが、一度球場に連れて行ってもらったとき、後輩だというプロ野球選手に会わせてもらう機会があって、初めて祖父を尊敬したそうな。祖父は若い頃、野球一筋で生きてきた。そして夢破れ、落ちぶれた。理由は知らないが徴兵もされなかった。戦後の動乱の中を祖母に養われ、昭和のダメ男として生きた。 こういった話は珍しくない。特に昭和初期のドラマや小説では日常風景としてダメ男の話が出てくる。時代が時代だから、彼らは揃いも揃って既婚者