「海洋国家日本の構想」高坂正堯 中公クラシックス 2008 本書に収められた論文が書かれたのは1963年から64年にかけてだから60年前ですか。いや凄い。深い学識、広い視野、大きな構想。なんて気持のいい文章だろう。丸谷才一がどこかで「偉い学者が書いた薄い本を読め」と言ってゐたけれど、この本なんかまさにそれぢゃないかしら。 高坂さんの本は学生時代に「文明が衰亡するとき」を読んで感銘を受けた記憶がある。大学の購買部に「講師の推薦図書」みたいなコーナーがあり、そこに並んでゐたのに興味をひかれて買ったのだ。なつかしい。 1934年生まれということは井上ひさしと同年か。63歳で死去は当時としても短命だろう。早すぎる。いまは70歳がちっとも稀ではなく、そこからの10年をどう生きるかというのが問題となってゐる。政治・社会システムの劣化と貧困化が急速にすすんでゐるからこれからはあやしいが。 理想や価値を保