「所蔵資料から」は、実篤記念館で所蔵する作品や資料の解説、 実篤にまつわるエピソードなどをご紹介する記事で、 過去に館報『美愛眞』に掲載されたものを、再編集し掲載しております。 *日程や名称、執筆者の肩書きは、発行時のものです。 この資料はノート片一枚の両面に紫色のインクで書かれており、紙は酸化が進み赤茶け、破けた箇所などもあり、現在の状態は良いものではありません。 武者小路実篤は、昭和11(1936)年4〜12月、当時、ドイツ大使であった兄・武者小路公共の勧めもあり、生涯ただ一度の欧米旅行をしました。 このトルストイの自筆原稿は、旅先のウィーンで購入しました。ウィーンには、8月後半の10日余り滞在しており、この間、街で出会った二人の日本人が、実篤を案内してくれました。 旅先から安子夫人へあてた手紙(8月31日消印)に、「トルストイの原稿と、ストリンドベルヒの手紙の本物を買つた。トルストイ