古代ギリシア・ローマ、中世まで、音楽は数学とともにリベラルアーツとして学ばれていた(参考:1.「古代・中世では音楽を教養として」)。両科目に共通することはなにか、あるいは音楽でこそ学べることはなにか?ピアニスト・数学教師である金子一朗さん(2005年特級グランプリ)に、両者に深く精通している立場からお話をお伺いした。「なぜ音楽が教養となるのか」を考える機会になれば幸いである。 数学と音楽の体系はほとんど同じだと思います。まず「分野としての構造」、そして「分野を身につけていく過程」、さらに「歴史的変遷」、この3つに集約できると思います。 小中学校で勉強する幾何学(図形の性質を求める学問)は、古代ギリシア時代に相当深く追究されています。皆が無条件で成立を認める公理(平行な二直線は交わらない、等)に基づいて作られているため、論理的にきちんとした構造になっています。測量などに用いる実用性の高い定理