「インターネット時代になってから、世の中に流布する音楽情報は、音楽に対する愛情も、情報自体の正確さも失われてしまったと思うんです」と、烏丸さんは話す。 かつて音楽ファンは、好きなアーティストの情報を得たい時には、書店巡りをしたものだった。あれこれ立ち読みしていればそれなりに必要な情報が得られたし、何より書店には、その道に通じた“街の頑固オヤジ”ともいうべき事情通のスタッフがいたのだ。そうした人物との日常的な会話を通じて、自分の世界を広げることができたものである。 それはレコード店においても同様だった。本と違って、LPやCDは購入前に店頭で中身を確認しにくい。それだけに余計、あれやこれやと商品を物色しつつ、顔なじみで信頼の置ける専門スタッフとの対話を通じて、ユーザーはアーティスト・楽曲の魅力やその特徴に触れることになる。時には聴きたい音楽を店内で流してもらうなどして、ユーザーは納得ずくで商品