家康が認めた浅草弾左衛門。 日本の被差別社会の鍵を握った弾左衛門。 その弾左衛門は13代が続いて、明治で廃絶した。 いったい弾左衛門とは何なのか。 長吏(ちょうり)の歴史。非人の生活。 皮革の取扱い。犯罪者や失業者との関係。車善七との確執。 13代目弾直樹の冒険。明治政府による決断。 そこには、大都市江戸がつくりだした権益社会の実像と、 日本の被差別社会の実像とが、鮮やかに重なっている。 今夜は、塩見鮮一郎の洞察なくしては生まれなかった 希代の小説の背景を覗きたい。 長編小説である。傑作である。浅草弾左衛門13代目の直樹を主人公にした。直樹は文政6年に生まれて、明治22年に67歳で没した。慶応4年1月13日に弾内記と、さらに弾直樹と改名して、そこで浅草弾左衛門の名は消滅した。直樹は“最後の弾左衛門”なのである。 20年前のこと、この小説が出現したときはびっくりした。まさか浅草弾左衛門が小説