冷戦の終結や天安門事件といった世界史的な事件の波は、当初ゴルバチョフが企図していたような穏当な体制転換に留まることなく、雪崩を打つようにして共産主義圏の盟主ソビエト連邦を崩壊へと導いてゆく。永久に続くかにも思われた人類社会の強大な第二極が瞬く間に消失するという事態は、唯一の超大国となったアメリカの政治学者フランシス・フクヤマをして欧米型の自由民主主義がついに普遍価値として勝利したという「歴史の終わり」を豪語させ、あるいは逆にサミュエル・ハンチントンをして歴史や宗教を共有する大きなエリアごとに世界が多極化する「文明の衝突」の危機を唱えさせたように、世界秩序の変動をどう受け止めるかが全地球的な課題として各国に降りかかることになった。