岸田文雄首相は、衆院解散がなければ2025年までは全国規模の国政選挙の予定がない「黄金の3年」を手にしたが、これは過去の慎重な政策方針の結果である。 まず自民党総裁選では、現状の制度改革を唱える河野太郎氏に対して、成長よりも分配を重視した「新しい資本主義」を唱えることで、現状維持を望む既得権層に安心感を与えて勝利した。 他方で、アベノミクスの下で高騰した株価と停滞する賃金水準の格差を是正するための分配政策の柱は資本所得への課税であった。これに対して金融界から批判が生じると、今度は「成長も分配も重視」の政策に転じ、さらに「資産所得倍増論」まで打ち出した。 この変わり身の早さとスキャンダルとは無縁の人柄で、野党に付け入る隙(すき)を見せず、7月の参院選でも圧勝した。いかなる政策でも放り込める「新しい資本主義」を掲げて、政権は盤石となっている。これは、いよいよ満を持して、従来の「何もしない岸田内