国語辞典の語釈は、実は、辞書によってずいぶん違いがある。 どのような国語辞典が、単なる言葉の意味や使い方を知るだけにとどまらず、自分の考えを展開する起点となり、深化させる道具となる辞書であるのか。それは、日常の言語生活において使われる、言葉の使用例を徹底して調べ尽くした上の、深い思索の結果としての語釈をほどこした辞書である。言い換えれば、「考えている辞書」が「考える辞書」の前提なのである。 1972(昭和47)年の初版の「序」から約半世紀の間、『新明解国語辞典』は、あるべき辞書の姿を追い求め、日本語を見つめ続けてきた。 「生活は言語によって支えられ、われわれの思考と内省は言語によって深まる ――第四版序文より」とあるように、より正確かつ厳密に言葉をとらえる方針を堅持してゆくためには、時代とともに変容する社会の変化にもしっかりと対応してゆかねばならない。 今回の改訂も、まさにそのように行われ