たとえば、あなたが、ガンの告知を受け、「五年後生存している確率は、10%です」と言われたとしよう。 科学的に扱うことのできる「統計的真理」としては、それ以上のデータは得られないかもしれない。量子力学の「ダブル・スリット」の実験において、電子が二つのスリットのうちどちらを通過するか、確率的な記述が与えられることのすべてであるように、多くの場合、私たちは「統計的真理」以外の知識を得られない。 しかし、患者本人にとっては、5年後に「10%生きていて、90%死んでいる」という状態はあり得ない。5年後には「生きている」か「死んでいる」かのどちらである。「10%生存している」というのは、たくさんの患者を集めてきた時の「アンサンブル」の性質に過ぎない。 統計的手法には致命的な限界があるが、一方で、生の行く末が「確率」で表されるということの中には、私たちを救済する側面もある。 早い話が、確率が100%でな